借金が減らない日本。日銀は国債を爆買い!その発行額が示す恐ろしい現実と絶望の未来とは?

社会

公開日:2019/3/13

『データが語る日本財政の未来』(明石順平/集英社インターナショナル)

 日本は1000兆円の借金をする世界最悪レベルの借金大国だ。この事実を知る人は多いが、必ずこんな言葉が出てくる。

「借金の9割以上は日本人のものだから大丈夫」
「日本には資産がたくさんある」
「いざとなれば日銀が日本円を大量に発行すればいい」

 だから絶対に財政破たんはしない。そんな「財政楽観論者」が巷にたくさんいる。私自身もそうだった。しかし『データが語る日本財政の未来』(明石順平/集英社インターナショナル)を読んでも同じことが言えるだろうか?

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 本書は日本財政の過去・現在・未来について解説する。そして財政楽観論者が唱える説を150以上のグラフと表を用いて完全否定し、厳しい現実をつきつける。

この本に書かれていることは日本にとって非常に不都合な事実です。右派からも左派からも嫌われる内容でしょう。辛い事実は誰もが目をそらしたくなるものです。しかし、その不都合な事実を伝えるのがきっと自分の役目なのだろう、と私は割り切っています。恐ろしい事実が書いてありますが、逃げずに向き合ってください。

 私はこれほどネガティブで背筋をゾクゾクさせる「まえがき」を読んだことがない。

■政府は1965年度以降、一度たりとも借金の残高を減らせていない

 本書は150を超えるグラフ・表を用いて、日本政府が抱える、つまり私たち国民が抱える借金がいかにとんでもないことになっているか、それがどんな未来を呼び寄せるか、どうしようもない事実をつきつける。読者に分かりやすく伝えるため、架空のキャラクター2人が対話形式で解説を進めるのでありがたい。

 一般的に「国の借金1000兆円」と言われているのは、公債、政府短期証券、借入金の3つ。その中でも8割以上を占めるのが国債(=公債)だ。国債にはいくつか種類があり、もっとも額が多く存在をあまり知られていないのが、国債の借り換えのために発行される「借換債」だ。

 国債には「60年償還ルール」がある。たとえば政府が国民から600円を借りたら、10年ごとに100円を返し、60年後に合計600円を返し終える。ここで問題となるのが、60年間かけて返すので、借金の利息がとんでもない額になること。本書では、旧大蔵省(現財務省)の米澤潤一氏が行った分析結果を紹介している。なんと平成27年度末までの普通国債残高763兆円のうち、利息の支払いのせいで発生した借金が335兆円に達するというのだ。

 借換債は2011年以降、毎年100兆円を超えて発行されている。これは「国債整理基金特別会計」という特別会計に出てくるのだが、メディアではあまり報じられない。私たちがよく目にする一般会計には出てこない帳簿だ。借換債は民間の金融機関が主に購入して成り立っている。もし借換債を誰も買わなくなると、国が約束した日にお金を返せなくなる。デフォルトだ。つまりどうなるか。

オシマイ。

 架空のキャラクターが放つふざけた一言だが、本書で解説される内容を読むと、どうにも寒気が走る。

 政府はこれからも60年かけて国債を返す。借金を返すために借金を重ね利息を増やし…という行為を繰り返す。ちなみに政府は1965年度以降、一度たりとも借金の残高を減らしたことがない。

■日銀が国債を買い支える恐怖

 日本の国債は安全だ。したがってローリスクローリターン、つまり元本に対しての金利が安い。これが私たちの信じる国債のイメージだ。しかし本書を読むとそれもどうやら怪しいらしい。というより、もっと恐ろしい事実をつきつけられる。

 日本の公債の残高は約900兆円にのぼる。国債の利率が低くて助かっているが、もし「国債は安全じゃないから買わないほうがいい」と国民が判断するとどうなるか? 国債の利率が上がり、借金の利息が膨大になる。900兆円なので1%上がるだけで大変な影響だ。

 そのため日銀は国債を「爆買い」している。年間にして約80兆円。国債の価格の暴落と利息の上昇を防いでいるのだ。「なぜ日銀が爆買いすると国債が安定するのか」という仕組みは本書に委ねるとして、なぜ日銀が「爆買い」してまで国債を支えなければならないのか。

 それは日本が経済成長できていないからだ。内閣府の「国民経済計算」によると、ここ数年のGDP成長率は実に伸び悩んでいる。これからますます超少子高齢社会が加速するので、経済成長はとうてい望めないだろう。そのため税収も伸びない。日本は1990年度に記録した約60兆円を最後に、一度もこの税収を超えていない。

 さらに今後は社会保障費も増大する。でも経済成長が望めない。ということは税収が伸びないので国の予算が足りない。そのため借金、つまり国債を発行するしかない。しかし一度も借金を減らせたことのない政府が今後、国債を完全に返し終えるアテはない。現在でさえ借換債を毎年100兆円発行しているからだ。それが影響して国債の信用をなくすと、ますます財政状況が悪くなる。だから日銀が国債を買い支える。

 …本書が読者に伝えたいことが段々とご理解いただけたのではないか。

■この本に記されているのは日本の絶望の未来だ

 本当に残念ながら、ここまでの内容は本書のほんの一部だ。大事な内容の一部を切り取ったにすぎない。「続きは本書を読んでほしい」としたいが、安易にそんなことも言えない。なぜならこの本に書かれているのは、日本の絶望の未来だからだ。

「アベノミクスのおかげで経済成長できた」と言われているが、それが大嘘だったことをご存じだろうか? それを公表すると経済に影響するので、「ソノタノミクス」で経済成長の算出方法を強引に変更したのだ。それほどまでに日本経済は追い込まれている。

「いざとなれば日本の資産を売ればいい」という意見もあるが、それは同時に破産を意味する。会社でたとえると倒産に近い。それでも無理やり実行したとして、たとえば資産の1つ、年金積立の運用寄託金を売却するとどうなるのか? 道路・堤防などの公共用財産は誰が買うのか? 米国債を売却するとどうなるのか?

 ではもう1つの意見、「日銀が大量に日本円を発行」すると、事実上の債務超過に陥る。その国の貨幣の価値は、その国の信用に比例する。つまり私たちが所有する日本円が暴落することになる。ところが幸か不幸か、この未来が訪れたとき、私たちにどんな運命が待ち受けるのか分からない。

世界3位の経済大国の中央銀行が債務超過に陥るなんて事態は人類史上例がないからね。

 本書ではこの危機的状況の解決策が3つ挙げられている。それが「増税と緊縮」「経済成長」「極端なインフレ」だ。ちなみに1つ目の増税は、現段階で消費税を最低25%に引き上げることを意味する。

 私は本書を読み終えて言葉がなかった。たった1つだけ浮かんだ感想がある。

「一体どうすればいいんだ?」

 この国は本当に「オシマイ」かもしれない。本書は読まないほうが幸せかもしれない。

文=いのうえゆきひろ