オカン系男子が無自覚チートでやらかしまくる!? 冒険者の胃袋を鷲掴みにする異世界ほっこりライフ!

文芸・カルチャー

2019/3/9

『最強の鑑定士って誰のこと? 6 ~満腹ごはんで異世界生活~』(港瀬つかさ:著、シソ:イラスト/KADOKAWA)

 今や大人気の異世界転生ジャンル。いわゆる「なろう系」と呼ばれるものは、下記のような特徴を持っていることが多い。

 ある日突然見知らぬ異世界に飛ばされ、その際、女神さまから生きぬくための術――いわゆる「チートスキル」を手に入れる。そして主人公は、時に魔王と戦って平和をもたらすため、または周囲に集まる美少女たちと幸せに暮らすため、また別の物語では、田舎でのんびりスローライフを送るために、そのチートスキルを最大限に生かしていく。この自由でのびのびとしたストーリーが大きな魅力となっており、厳しい現実に直面する現代人の心に刺さっている。

 だが、世の中にはそんなチートスキルを手に入れても我関せず、異世界へ行く前と同じような生活を送るマイペースな主人公もいる。その意味で他作品と一線を画しているのが、本作『最強の鑑定士って誰のこと? ~満腹ごはんで異世界生活~』の主人公・釘宮悠利である。

 高校生の彼が突然ダンジョンに飛ばされて迷子になり、本人の知らぬ間に鑑定系スキル【神の瞳】を手にするシーンより物語は始まる。早速、即死級のトラップを看破し、たまたま冒険者クラン《真紅の山猫》の窮地を救った悠利。リーダーのアリーは後ろ盾のない悠利を見かねて、メンバーが寮生活を送る大所帯へ連れていく。そこで分かったのは、悠利の【神の瞳】は鑑定系の最上位スキルで、この世に二人といない激レアスキルであるという大変な事実。

 それを知った悠利はいざ冒険に出発!……なんてことにはならず、居候として寮の台所事情を一手に引き受けることになる。

 そう、彼は冒険なんてさらさら興味ナシ、料理、・洗濯・掃除が大好きな、オカン系男子だったのである!

 本作の最大の見どころは、なんといっても、異世界でもマイペースに暮らす天然少年・悠利と、彼の最強スキルの無自覚な大盤振る舞い&持ち前の料理スキルに振り回されまくる異世界人たちの対比だ。

 彼にとっては馴染みのある家庭料理でも、《真紅の山猫》メンバーにとっては調理法一つを取っても驚きの連続だ。

 蒸かすしか用途がないと思われていたジャガイモでコロッケを作ったり、異世界に「出汁」の概念を広めたり……。

 そして、この家庭料理に舌鼓を打つメンバーの様子がまた新鮮で、読んでいて楽しいのである! 農家出身の少年ヤックは、悠利が作り出す料理はもちろん、作り方にも興味津々だし、寡黙な少年マグは初めて味わう昆布出汁の奥深さにのめり込み出汁信者になるし、マヨネーズの素晴らしさに目を付けた商人は「譲ってくれ」と土下座の勢いで悠利に縋りつくのである。ただし、金儲けに興味のない悠利が「明日の朝食に使うから無理」と何とも呑気な理由で一刀両断。

 ほかにも、【神の瞳】を食材の目利きに使ったり、マジックアイテムと化した持ち物でアクセサリーを作ったりと、せっかく与えられたチートを無駄遣いしてやりたい放題である。

 だが、ここが本作のミソ。そんなマイペースな悠利に振り回されつつも、《真紅の山猫》メンバーは彼のことが大好きなのである。

 ダンジョン探索に挑むパーティのため、早朝からサンドイッチを用意したり、床に臥せるメンバーを気遣っておじやを用意したりと、悠利の行動は真心からメンバーを支え、優しさ溢れる気遣いばかり。

 だからこそ、常識はずれな行動をとる悠利に対し、口では「自重しろ」と言うものの、内心そんな日々を楽しんでいるのだ。

 その温かい関係にほっこりすること間違いなしである。

 そんな究極の飯テロほっこり小説『最強の鑑定士』シリーズの最新6巻が3月10日に発売されるらしい。冒険者クランの食堂を中心にストーリーが展開されることが多い本作だが、今回は目先を変えて温泉都市に旅行へ行くとのこと。いつもと違った環境での悠利のやらかしっぷりを、一読者としても楽しみにしている。

 また、それを記念して人気声優・堀江瞬、安元洋貴を起用したオーディオドラマ、その二人が料理に挑戦したという料理動画もお試し版が無料公開されているので、そちらもぜひチェックしてみてはいかがだろうか。

・オーディオドラマ

・料理動画