孤独や寂しさと上手に付き合うなら、「退屈」と仲良くなろう。その方法は――

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公開日:2019/3/8

『50歳からの孤独入門』(齋藤孝/朝日新聞出版)

 人生100歳時代といわれる。昔は40歳で初老といわれていたが、現代では50歳でも、まだ人生の折り返し地点だ。人はいずれ年をとるが、50歳からの「人生後半戦」は、どのようにすれば充実させられるのだろうか。

 終わりよければすべてよしという言葉がある。人生後半戦が有意義であれば、最期に人生を振り返ったとき、満足して逝くことができそうだ。50歳からの人生を充実させるためのテーマ。それはズバリ「孤独」であると、『50歳からの孤独入門』(齋藤孝/朝日新聞出版)は綴る。

■孤独になってアイデンティティの危機に陥ってしまったら…

 子どもが親元を離れ、両親を看取り、もしかしたら熟年離婚を選択することになるかもしれない。早ければ会社を早期退職、または役職定年となり、同僚や部下が離れていく。友人の死があるかもしれない。本書は、そんな「孤独」の中で、50歳以降は生と死の折り合い、つまり最期は自分ひとりで死んでいかなければならないという覚悟を養う必要性に言及している。

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 孤独と上手く付き合うには、まず「自分らしさ」を見つめ直すことが大切だ。孤独の中では、頼りになるのは自分自身。自分らしさを見失っていては、孤独と上手く付き合えない。

 本書は、50歳を過ぎると、「アイデンティティの危機」が訪れる、という。お察しの人もいるだろうが、多くのビジネスマンがそれまでアイデンティティを見出していた「仕事」に、区切りがつくからだ。例えば、役職定年になる。再雇用を打診される。こうなれば年下の上司の指示を聞いたり、落とされた待遇を呑んだりしなければならないケースが多くなる。

 こういった場面で必要になるのは、プライドとの折り合いをつけることだ。仕事以外で「自分は何者である」という手応えのある存在証明、アイデンティティを掴むことから、「孤独との旅」が始まる。同時に、嫉妬心や存在承認の欲求とも折り合いをつけるべきだと、本書は述べている。

■孤独と上手に付き合うには「退屈」と仲良くなるのが近道

 さて、では孤独との付き合い方を少し具体的に紹介したい。本書は、孤独に打ち勝つためには「退屈力」が必要だとしている。50歳までの生活と比べると、50歳以降は独りでいる時間が増える。「退屈を我慢する」「退屈しないように刺激を求める」という考え方は、いずれ無理が出てくるという。それよりも、「退屈と仲良くする」「退屈と馴染む」といったポジティブな捉え方が付き合いの土台となってくる。本章では、さまざまな「退屈と仲良くする」方法が掲載されている。山を見る、盆栽を愛でる、詩歌を嗜む、哲学の世界に足を踏み入れる、など。

 先人たちの晩年の歩み方に触れ、自分のタイプに合う人生モデルを見つけ、ひとりの時間を味わい尽くす営みに贅沢を見出してみよう。50歳以降になって、やっと人は人生の深い意味がわかってくると本書は締めくくっている。

文=ルートつつみ