『ペンデュラム』『レムナント』の羽純ハナが描く人外BL新作、攻めの正体は、まさかの“あの妖怪”――!!

アニメ・マンガ

2019/3/9

『妖かしの箱庭に浮かぶ月』(羽純ハナ/双葉社)

 2016年のコミックスデビュー以来、各種BLランキングで高評価の獣人オメガバースシリーズ『ペンデュラム』『レムナント』で注目を集めている羽純ハナ。作品の多くが非日常を舞台にした人間と人外の恋愛というコアな設定で、そこに生きるキャラクターを活写することで、世界観へ読者を引き込む作家である。

 昨年末に発売された『妖かしの箱庭に浮かぶ月』(双葉社)は、そんな羽純ハナの人外BL新作。主人公は、ゲイであることや、前任校で一方的に被害を受けた事件の責任を問われ、心身に傷を負った高校教師・結城朱里。前職の退職理由を問われないまま、採用が決まり赴任した私立鴉台学園は、政治家や財界人の子息が通う男子校というふれこみだったが、その実態は生徒も教師も妖かしという「人成らざるもの」の巣窟・妖怪学校だった。

 赴任初日から、人外の生徒たちの縄張り争いに巻き込まれ、目の前で鬼に変化した生徒の赤月に、激しい口づけで唾液を飲まされ、マーキングされる結城。怒涛のシリアスな展開だが、実はこれがファーストキスで腰が抜けてしまった結城を世話する赤月、というコミカルなシーンが続き、ふたりの交流が始まる。孤高の存在だった赤月にとっても、縄張り争いに参加したのはこれが初めてのことで、お互いに別の孤独を抱えていた結城と赤月の距離は、立場や種族の差を超えて急速に縮まっていく。

 この作品がカテゴライズされる、人間と人外や、人外同士が恋をする人外BLは、BL界でも人気のジャンルのひとつで、作品数も多い。よく描かれるのは、もふもふ、けもみみ、といった癒やされる外見の人外で、そうでない場合も、スタイリッシュである場合がほとんどだ。

 しかし、今作は違う。狐、狗、鴉など動物を根源に持つものや、鬼や天狗など、人外の物の怪(もののけ)が集まる学校の中でも、赤月は大きすぎる力を持つ数少ない特殊な種族で、中盤で明かされるその正体は、著者の羽純自身もあとがきで「ホントに●●ってアリ?!」「ホントに描いちゃうよ?!」とくり返し担当編集者に確認しているほど、恐ろしい姿をした妖怪。ヒントは「●鬼」。コミックスを読まれた方は、ぜひ「●鬼」で画像検索をしてみることをおすすめする。

 ここまでの人外攻めキャラが登場できたのは、本作の連載誌が、「きらめく人外BLの宝石箱」がキャッチコピーの『コミックマージナル』だったから、なのは間違いないだろう。人外専門のBL誌という強固な足場を得て、人外を愛する作家と編集部が本気で創り上げた作品なのだ。かつてない人外フォルムで読者を圧倒する赤月と結城の、孤独で未熟だったもの同士の恋の結末は、タイトルや設定や装丁が醸し出すダークな雰囲気からは想像できないほど、チャーミングな読後感で、爽やかに着地する。

 3月22日には、結城役・古川慎、赤月役・小野友樹でドラマCDの発売も予定されている。コミックスとあわせて、目からも耳からも、この種族を超えた真摯な愛の世界にひたってみてはいかがだろうか。

文=はたのくみ

(C)羽純ハナ/双葉社