中高年の不倫市場規模は防衛予算とほぼ同額! お金で買える愛の値段を数値化すると?

社会

公開日:2019/3/11

『不倫経済学』(門倉貴史/ベストセラーズ)

 家庭用ビデオデッキの普及において「アダルト・ビデオ」が、そしてインターネットの普及に「アダルト・サイト」が果たした役割は小さくないという。それほど人間のセックスに対する関心欲求は大きいということだ。当然のように、これらの普及による経済効果は莫大なものとなった。

 人間の性愛活動について、マクロ経済学やミクロ経済学、行動経済学など、さまざまな経済学の観点から分析したのが、『不倫経済学』(ベストセラーズ)だ。著者の門倉貴史氏は、第一生命経済研究所の経済調査部主任エコノミストを経て、現在はBRICs経済研究所代表を務める経済分析の専門家で、『貧困ビジネス』(幻冬舎)をはじめ、著書も多数ある。

■中高年の不倫が動かす巨額のお金を試算してみると――

 本書が考察する人間の性愛活動のトピックは多岐におよぶが、中心となっているのは現代日本における中高年の性愛活動だ。

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 たとえば、日本経済において、中高年男性の不倫に関連して1年間に動くお金の総額はどれぐらいだろう?

 まず、コンドームで有名な相模ゴム工業株式会社の調査によれば、40代男性の26%、50代男性の28.9%、60代男性の23.8%が、現在進行形で不倫をしているという。これを人口データをもとに実数に直すと、不倫をしている中高年男性は合算で492万9048人となる。

 次に、不倫のデート代でどれくらいお金が動くかというと、ホテル代や飲食費、不倫相手へのプレゼント代などをあわせて年平均72万円という調査結果がある。これをかけあわせると、中高年男性の不倫の市場規模は、なんと年間3兆5489億円にもなるというから驚きだ。

 さらに、この3兆5489億円の需要が発生するとき、二次的な経済波及効果は約1兆9545億円になるという。ここでいう「二次的な経済波及効果」とは、不倫デートに伴う消費支出の拡大によって、飲食店や娯楽施設、ラブホテルなどで働く人たちの雇用・所得環境が改善し、その人たちの消費が増える効果のことだ。

 不倫の直接的な市場規模である3兆5489億円に、二次的経済波及効果の1兆9545億円を合算すると、中高年男性の不倫によって年間に動くお金の総額は、5兆5034億円にも達する。これは、2016年度の日本の防衛予算(5兆5000億円)と、ほぼ同額というから驚きだ。

■お金で買える“愛の値段”を数値化すると――

 本書では不倫のほかにも、日本の中高年の性愛市場で動くお金として、風俗産業や老いらくの恋、また熟年離婚などについてのお金の動きも分析しており、それらの総額は23兆9000億円に達するとしている。この数字は、脱税や犯罪などによって動く日本の「地下経済」の市場規模をもはるかにしのぐという。しかも、加速する高齢化によって、この中高年の性愛市場規模は今後ますます拡大していくだろうと著者は予測する。日本経済を“中高年のセックス”が動かすようになる可能性は、低くはないのだ。

 ちなみに本書では、女性にとっての「愛の値段」も割り出されている。アクサ生命が働くアラサー、アラフォー独身女性600人を対象に「結婚相手に求める理想の年収」を調査したところ、平均で552万2000円となった。いっぽう、「心から愛せる男性に対して、理想の年収からどれぐらいまでなら下がっても許せるか」という調査をしたところ、平均270万5000円となった。つまり、「理想の年収」と「愛する人なら許せる年収」の差額である281万7000円が、「1年間の愛の値段」ということになる。

 …もちろん、これは恋愛を数値化するひとつの試算にすぎないが、なかなかシビアな金額であることは間違いない。

文=高坂笑/バーネット