子どもの笑いのツボにジャストフィット!『kodomoe』の新作絵本2冊は、何度もページをめくりたくなる!

文芸・カルチャー

公開日:2019/3/13

「親子時間」を楽しみたいママを応援する白泉社の育児誌『kodomoe』。これまで数多くのベストセラー絵本を生み出してきたこの雑誌から、「これは子どもに受けそう!」という絵本が3月6日、2冊同時発売された。さっそくわが家の息子(4歳、絵本好き、目下カタカナを勉強中)と一緒に読んでみたので、その反応も含めてレビューしてみたい。

■驚きの展開とラストはほろり! たくさんの食べ物たちが登場!

『たべものやさん しりとりたいかい かいさいします』(シゲタサヤカ/白泉社)

『たべものやさん しりとりたいかい かいさいします』(シゲタサヤカ/白泉社)は、町の食べ物屋さんが集まってしりとり大会で競争する、というゲーム性のある絵本である。

 大会に参加するのは、おすしやさんにパンやさん、ケーキやさんにラーメンやさん、レストランにくだものやさんにやおやさんの7チーム。店先に並んだ食べ物たちが、ゾロゾロと会場に集まってくる冒頭からして、「面白いことになりそうだぞ」と期待に胸が膨らむ。

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「あ」から始まるしりとりは、アップルパイ→いくら→ラーメンと続くが、「ん」で終わったのでラーメンは失格。2回戦はあまえびからスタートする。

 シゲタサヤカさんといえば、独特のゆる~い絵柄ですでに人気の絵本作家。味のある表情を浮かべた食べ物たちがゲームの行方に一喜一憂する姿は、なんともいえず可愛らしい。

 うちの子が声を出して笑っていたのは、順調に勝ち進んでいたあるチームが、ある理由でいきなり苦境に立たされてしまうくだり。しょんぼりうなだれる顔つきが、おかしくてたまらない様子だった。あっと驚く大逆転のストーリーと、しりとりというシンプルなゲームのもつワクワクが子どものツボにフィットしたようだ!

 登場するのは身近な食べ物ばかりなので、言葉や文字を覚え始めた年代のお子さんにもオススメ。ちなみにうちの子はこの絵本のおかげで、「ラーメン」「パン」といったカタカナが読めるようになった。

■何度もページをめくりたくなる! 夢のような世界!

『ねたあとゆうえんち』(大串ゆうじ/白泉社)

『ねたあとゆうえんち』(大串ゆうじ/白泉社)は、対照的に緻密なタッチの絵柄に目を奪われる作品。主人公は、夜がきても絶対に寝ないと決めている男の子。なぜなら自分が寝たあとにはきっと楽しいことが待っているから……というプロローグから、不思議なファンタジーワールドへと読者を連れてゆく。

 男の子が寝ていたベッドから車輪が出て、町のどこからか家の窓まで延びてきたベルトコンベアに乗って、するすると移動。やがてベッドは、夜空に浮かぶ巨大なものに吸い込まれてゆく。その中にあるのは、遊園地や忍者のひみつ基地、おかしハウスやおもちゃ工場など、子どもにとってまさに夢の国だ。

 おもちゃ箱をひっくり返したような、あるいは駄菓子屋の店先のような、にぎやかでカラフルな世界観。そこに目と心を奪われない子はいないはずだ。見開きページの隅から隅まで、ぎっしりと描き込まれた情報量の高い絵柄は、「隅っこに描かれたものほど気になる」という子ども特有の心理を刺激してやまない。

 うちの子も遊園地のシーンにさしかかると、食い入るようにページを凝視。よく見ると妖怪がバンド演奏をしていたり、忍者がゴーカートに乗っていたりと、一度読んだだけでは気づけないネタが詰まっている。うちの子が一番ゲラゲラ笑っていたのは、遊園地にある「いいにおいおなら」という謎の遊具。作者の大串ゆうじさんは、幼児の笑いのツボをよく分かっているなあ、と感心した。「ここにはこんなのがあって、こっちにはこれがあって」とページを開くたびに報告してくれる姿に、わが子の成長をあらためて実感。

 キャラクター化された食べ物たちのゆる~いしりとり大会と、レトロで情報量たっぷりの不思議の国。作風こそ対照的だが、どちらも子どもたちを楽しませ、笑わせることに手を抜いていないという優れた共通点がある。実際、大人のわたしが読んでも、甲乙つけがたい面白さ。この先もロングセラーとして読み継がれていってほしい、魅力にあふれた2冊だった。

文=朝宮運河