今もなお注目される、謎すぎる伝説の犯罪「三億円事件」マンガ3選!『クロコーチ』『悪魔のようなあいつ』『アンラッキーヤングメン』

マンガ・アニメ

2019/3/16

 昨年8月、小説投稿サイト「小説家になろう」にアップされ、物議を醸した作品『府中三億円事件を計画・実行したのは私です。』(白田/ポプラ社)。本作は、日本の犯罪史上、「伝説」と言われることの多い強盗事件「府中三億円事件」をモチーフにしており、実行犯である白田の独白形式で綴られている物語だ。リアリティある描写から、その真偽の程がネットを中心に話題となり、さらにはひとつの犯罪を巡る若者たちの心境に胸を打たれる人も続出した。書籍発売直後には情報番組『Mr.サンデー』で特集が組まれ、発売からわずか5日で累計発行部数10万部を突破。またしてもここに、ネット発の注目作が生まれたと言えるだろう。

 この「府中三億円事件」は、これまで幾度となく複数のクリエイターたちが取り上げてきた。小説はもちろんのこと、映画やテレビドラマ、なかには事件からインスパイアされた音楽もある。この事件のなにが、彼らの創作意欲に火をつけるのだろうか。

 今回は、前回紹介した「府中三億円事件をモチーフにした小説」に続き、マンガをいくつか紹介する。

■事件の背後に隠された、金と欲望がひしめく闇の世界

『クロコーチ』(リチャード・ウー:原作、コウノコウジ:作画/日本文芸社)

 数々の未解決事件を取り上げ、そこにひとつの仮説を立てている異色のミステリマンガ『クロコーチ』(リチャード・ウー:原作、コウノコウジ:作画/日本文芸社)。昨年、約6年にわたる連載の幕を下ろしたことでも話題になったことが記憶に新しい。実は本作でも府中三億円事件が取り扱われている。

 主人公を務めるのは、黒河内圭太と清家真吾というふたりの警察官。しかし、その性格は正反対である。捜査で知った情報をもとに、政治家や実業家をゆすり、大金をせしめている黒河内は、最悪の人物。それに対し、東大卒のキャリア組である清家は、正義感の強い好青年だ。

 そんなチグハグコンビが迫る三億円事件の真相は、これでもかというほど真っ黒。背後に潜むのは、暴力団や公安の影。金と汚い思惑が交錯し、事件を想像以上に複雑化させているのだ。

 本作で描かれる真相は、実際の府中三億円事件で言われている「鮮やかで死傷者を出さない犯行」とは真逆なもの。しかし、こんな解釈もできるのか、と思えば、より事件の真相が知りたくなってウズウズしてしまうだろう。

■誰をも魅了する実行犯を待ち受ける、過酷な運命

『悪魔のようなあいつ』(上村一夫:作画/講談社)

 作詞家として知られる阿久悠さん。彼の原作をもとにマンガ化されたのが、『悪魔のようなあいつ』(上村一夫:作画/講談社)だ。

 物語の主人公は、「クラブ日蝕」の専属歌手・可門良。彼には“裏の顔”がある。ひとつは、男娼であるということ。そしてもうひとつが、三億円事件の犯人であるということだ。

 可門は、まさに“悪魔のようなあいつ”と称されるに相応しい人物。蠱惑的な容姿を持ち、近づいてきた女たちをトリコにしてしまう。可門を容疑者と目して付け狙う刑事を、見事にはぐらかす。奇怪な事件の真犯人は、まるで世の中をあざ笑うかの如く、飄々と生きている。……かと思いきや、そんな可門を襲うのが残酷な運命だ。重病に冒されている可門は、余命幾ばくもないのである。

 はたして、可門はどのような道を辿っていくのか。決して幸せにはなり得ない予感を胸に、読者はヒリヒリとする青春を追体験することになる。

■閉塞感に満ちた時代に翻弄される、若者たちの姿

『アンラッキーヤングメン』(大塚英志、藤原カムイ/KADOKAWA)

 大塚英志×藤原カムイというマンガ界における超強力タッグが生み出した『アンラッキーヤングメン』(KADOKAWA)。本作もまた、三億円事件をモチーフにした作品だ。

 舞台となる1968年の東京は、学生運動が盛んに行なわれていた。変革と暴力に満ちた時代を生きる若者たちが企てたのは、ひとつの強盗事件。それが三億円事件である。

 ただし、本作は三億円事件だけを扱ったものではない。少年による連続殺人事件「永山則夫連続射殺事件」や日本のテロ組織が起こした「連合赤軍事件」、学生運動家と機動隊が衝突した「東大安田講堂事件」など、実在する数々の事件が登場し、それらが緻密に絡み合っていく。その描き方は、サスペンスの名手である大塚英志さんならではのもの。時代に翻弄される若者たちが息苦しさを抱えながらも生きようとする様子は、絶望に満ちているようにも読める。しかし、そこには本当に希望がなかったのか。“アンラッキー”な彼らはどこへと向かっていくのか。現代とはまったく異なる当時の空気に浸りながら、ぜひ読んでもらいたい。

 小説とはまた違った読み心地を味わえる、府中三億円事件をモチーフにしたマンガたち。事件の謎を追いかけるのもよし、犯人たちのバックボーンに迫るのもよし、いずれにしても謎に満ちた設定に魅了されることは間違いないはずだ。

文=五十嵐 大