AIに仕事を奪われない“人間性”をつくる読書術。佐藤優氏が指南する、力を伸ばすのに良い本は?

ビジネス

2019/3/15

『人をつくる読書術』(佐藤優/青春出版社)

 近ごろ教養ブームが、またそれに伴ってささやかな読書ブームが巻き起こっている。AI時代の到来によって、単純作業を基本とする職業はAIにとって代わられる――ゆえにゼロからイチを生み出す能力を身につけようと、ありとあらゆる知識を吸収したいと思う人が増えていることがその背景にあるのかもしれない。しかし、単なる知識の寄せ集めだけでは、新時代に対応する力は身につかないだろう。

『人をつくる読書術』(佐藤優/青春出版社)の冒頭で佐藤氏は、こう述べる。

“教養とは、想定外の出来事に適切に対処する力である”

 この先、単純作業を機械やAIが担う時代にあっては、人間はますます想定外の出来事に対応することが求められそうである。本書で紹介されている読書術を駆使すれば、創造性豊かで想定外のことにもうまく対応できるような“人”を形づくっていくことも可能になりそうだ。そんな読書術の一部をこれから本稿にて紹介していこう。

■読書には順序がある――専門書を読む前の重要なステップ

 想定外の出来事に対処できるようになるには、専門的な知識や思考の能力も必要になってくる。専門的な知識を身につけるなら専門書だ! ――と難解な書籍に手を出したくなる気持ちはわからないではないが、読書には適切なステップがあるので、まずは入門書に手を出してみるとよいという。

 佐藤氏が入門書としておすすめしているのが“通俗本”だ。ここでいう“通俗本”は“低俗な本”という意味ではまったくない。専門書より一般的で入手しやすい通俗本には、その分野の専門家が専門知識を平易な言葉でわかりやすく解説したものが多くある。たとえば、新書や学術文庫などのシリーズには内容のしっかりした通俗本が多いため、専門的知識を身につける際のとっかかりには、これらの書籍の中から自分の学びたい内容のものを見つけて読んでみるとよさそうだ。

■言葉をうまく操りたければ、古典を読むといい

「人間が人間として文化的な生活をしていくということは、言葉をいかにして操ることができるかということと同義」と、佐藤氏は本書の中で述べている。たしかに、自分の気持ちを考えるときも、それを整理するときも、それを表現する場合にも、必ず言葉を介しているのが人間だ。

 そして、言葉で考える能力も、それを文字に起こしたり声に出したりするのも、氏によれば「読解力」を超えることはないという。それゆえ、読解力を鍛えることには重要な意義がある。

 その読解力を効率的に高めるには古典を読むのがいいという。古典といえば、紫式部や夏目漱石、あるいはシェイクスピアやゲーテなどを思い浮かべる方も多いかもしれないが、文庫化されて10年程度書店の棚に並んでいるような名作であれば、充分に古典と呼べるそうだ。たとえば、『夜のピクニック』(恩田陸/新潮社)や『海辺のカフカ』(村上春樹/新潮社)のような書籍も、こうした読書の対象として差し支えなさそうである。

 基本的な“通俗本”で初歩的な知識を得ながら、古典を読み作品の時代背景を考えたり、登場人物の心情を読み取ったりする。そういったステップを経て、やがて専門書を手に取り深い知識を身につける。そうやって得た教養が、私たちの“人間性”をつくってくれるのである。

文=ムラカミハヤト