ミステリー界を席巻した『屍人荘の殺人』の続編が待望の刊行! “死の予言”をめぐる連続殺人『魔眼の匣の殺人』

文芸・カルチャー

2019/3/17

『魔眼の匣の殺人』(今村昌弘/東京創元社)

 2017年、第27回鮎川哲也賞を受賞して今村昌弘氏のデビュー作となった『屍人荘の殺人』。奇想天外で斬新な設定と本格ミステリーならではのロジカルな謎解きで多くのミステリーファンの度肝を抜いた同作は、「このミステリーがすごい!2018年版」「〈文藝春秋〉2017年ミステリーベスト10」「2018本格ミステリ・ベスト10」でそれぞれ1位を獲得。さらに「第18回本格ミステリ大賞[小説部門]」を受賞し、第15回本屋大賞でも3位に選ばれるなど、圧倒的な高評価を得て大きな話題を呼んだ。今年はメディアミックス展開として『少年ジャンプ+』にてコミカライズの連載、神木隆之介主演の映画公開も決定。新人のデビュー作としては破格の注目を集めた一作だ。そんな『屍人荘の殺人』の続編となる『魔眼の匣の殺人』(今村昌弘/東京創元社)が、2019年2月に待望の刊行。前作での惨劇を生き延びた大学生の葉村譲が、今回も物語の語り手となっている。

 娑可安湖集団感染テロの大混乱とその最中に湖畔にあるペンションで起きた連続殺人事件に巻き込まれた葉村譲は、神紅大学ミステリ愛好会の会長となり、同事件を解決に導いた探偵少女・剣崎比留子を新たに会員として迎えて、心に傷を残しながらも大学生としての日常を取り戻していた。しかし、事件の発端となったと推測される正体不明の組織“斑目機関”についての調査は続けており、葉村はオカルト雑誌『アトランティス』に手がかりになりそうな記事を発見する。その記事によると、娑可安湖集団感染テロ発生前に事件を予言する手紙が編集部に届いており、その手紙には、数十年前に行われた“M機関”なる組織による超能力実験が予言の背景にあるという。

 これを知った比留子は、自分の「奇怪な事件を引き寄せる体質」を懸念し、ひとりで真相を探ろうとするが、それを察知した葉村は比留子の助けとなるために調査への同行を決める。かくして、ふたりは実験施設があったとされるW県の好見地区へと向かう。その人里離れた最奥地・真雁にはサキミと呼ばれる老予言者の住処“魔眼の匣”があった――。

 本格ミステリーというジャンルとまったく相容れないかのように思われる要素を巧妙に取り入れたことに前作『屍人荘の殺人』の新しさとおもしろさがあったわけだが、本作でも“予言・予知”という超常オカルト要素が物語の展開に大きな役割を果たす。それが、

「十一月最後の二日間に、真雁で男女が二人ずつ、四人死ぬ」

という老女サキミによる死の予言だ。予言を恐れた真雁の住民は一斉に姿を消し、さらに“魔眼の匣”と外部をつなげる唯一の橋が焼失してしまう。隔絶された“魔眼の匣”にいるのは葉村、比留子のほか計9人の男女。その中からひとり死ぬごとに消えていく“人形”。意外な人物の死と衝撃。誰がなんのために手を下しているのか、その動機と予言の意味は!? そして死の予言は的中するのか?

 さまざまな謎が絡まり合いながら、「次に殺されるのは誰か」というスリリングな展開が読み手を引き込んでいく。何より“予言・予知”という超常オカルト要素を軸にしながら繰り広げられる論理的な謎解き、終盤からラストにかけたドンデン返しが圧巻。高評価を得た前作の読者の期待を裏切らない今村昌弘氏のオリジナリティが発揮された見事な第2作といえるだろう。

 物語の最後は“斑目機関”との因縁がまだ続くことを示唆しており、第3作ではどのような奇抜な仕掛けを見せてくれるのか、今から楽しみだ。

文=橋富政彦