この親にしてこの娘あり! ヤマザキマリの「お母さん」は娘以上に破天荒だった!?

文芸・カルチャー

公開日:2019/3/16

『ヴィオラ母さん 私を育てた破天荒な母・リョウコ』(文藝春秋)

 母親を苦しめるものは、「母親たるものかくあるべき」という世間からの視線だろう。母親は完璧な子育てをしなくちゃならないもの、という周囲からの視線をものともせず、家族を愛しながらも、同時に自分の人生を全うする女性がいる。その名はリョウコ。『テルマエ・ロマエ』などで知られる漫画家・ヤマザキマリさんの母親だ。

 ヤマザキマリの母親の姿を描いた『ヴィオラ母さん 私を育てた破天荒な母・リョウコ』(文藝春秋)は、読めばエネルギーが湧いてくるビタミンエッセイ。ヤマザキマリといえば、17歳で油絵を学びに単身イタリアに渡り、シングルマザーになることを選択した後、35歳で研究者であるイタリア人と結婚。夫の仕事に伴い、アラビア、ヨーロッパ、アメリカ大陸と異文化の壁を越えながら、ワールドワイドに活躍している漫画家だ。波乱万丈な経歴に圧倒されるが、ヤマザキマリの母リョウコさんの人生は彼女以上に波乱に満ちている。

 リョウコは一般的な「いい母親」とはいえないかもしれない。だが、ひとたびこの本に触れれば、ひとりの女性としての、そのたくましさに圧倒させられてしまう。音楽を愛し、自分の人生を全うする、一切ぶれない生き方を貫くリョウコ。そんな姿から娘マリさんはたくさんのことを学びとったはずだ。

advertisement

 昭和35年、リョウコは27歳の時、仕事を親に内緒で辞め、新設された札幌交響楽団で音楽をやるため、半ば勘当状態で家を飛び出した。新天地・北海道で理解者となる男性と出会い結婚するものの、夫は早逝。シングルマザーとしてふたりの幼い娘を抱えて生きていくことになる。まだまだ女性が仕事を持つのが難しかった戦後の時代。それでも、彼女は音楽を諦めず、ヴィオラの演奏家という職業を選び、家族を守るために、大好きな音楽を演奏するために、自分の選んだ道を邁進していく。

『ヴィオラ母さん』を読んだ読者はどう感じたのだろうか。

ヤマザキマリさんのワールドワイドなその生き方にとみに憧れているのだけれど、その彼女を作ったのはこの母リョウコさんがいたからこそだという逸話の数々。ただ圧倒されて最後まで読み続けた。にゃんた

ヤマザキマリさんのエッセイを読んでいると、リョウコさんの話がよく出てくるのでどんな方なんだろう?とずっと思っていた。この本が出ると知って喜び勇んで購入。生きることを楽しむ姿勢は是非とも見習いたい。イズル)

生きることは楽しいことだという想いは子供たちにもしっかり受け継がれているのだと思います。自分の生き方をきちんと示すことが子供に対する親の役割であるのだなと考えさせられました。ryohjin

しまった。電子書籍で買ってしまった。紙の本だったら母に貸せたのに──。ヤマザキマリさんの破天荒なお母様に関するエッセイ。私はヤマザキマリさんの漫画では『ルミとマヤとその周辺』が大好きで大好きで、このエッセイを読み、あの漫画は多くが事実だったんだなということがわかって嬉しかった。モルテン

「一緒にいる時間は短くても愛情は伝わる」と娘であるヤマザキさんが断言していて、よかった。ムレハウス

母子家庭という大変さも周りの人に支えてもらい、周りの人に音楽を教え、お互いに助け合っていた古き良き時代を感じました。モビエイト

 固定観念に左右されないボーダレスな娘マリが生まれたのは、間違いなく、リョウコの影響が大きいだろう。何があっても自分の人生を貫く。リョウコが音楽を愛し続けた姿を見て育ったマリは絵を描くことへの情熱を燃やし続けている。

 イタリアで結婚せずに子どもを作り、連れて帰ったマリに対し、リョウコは怒りもせず責めもせずに「仕方ないね!! 孫の代まではアタシの責任だ!!」と言ったという。そんなリョウコの力強さ、明るさ、あっけらかんとした姿にこちらまで元気をもらえる。朝ドラになりそうな程、劇的で、爽やかな読後感。読み終えると、きっとあなたの心も晴れやかな気持ちになっているはずだ。

文=アサトーミナミ

※引用は、トリスタが運営する「読書メーター」投稿コメントより