人生、頑張ったら負け!? ガンバラン国の「ガンバラなくても結果が出せる10カ条」に学ぼう

暮らし

公開日:2019/3/18

『ざんねんな努力』(川下和彦、たむらようこ/アスコム)

「なんか、無駄に頑張ってないか?」…と、ふと我に返った経験が、誰にでもあるのではないだろうか。不慣れな仕事を頼まれてこなしたのにボロカスに酷評されたり、運動やダイエットを習慣化させようとしたのに途中で折れてしまったり。

 そんな頑張り屋さんたちにぜひ、ご一読をオススメしたいのが『ざんねんな努力』(川下和彦、たむらようこ/アスコム)だ。

 本書は、クリエイティブディレクターで、習慣化エバンジェリスト(伝道・啓蒙者)の川下氏(本書の習慣化のネタやコツ担当)と、慎吾ママの生みの親としても知られる放送作家たむら氏(物語化担当)のコラボ作品だ。本書の特徴は、物語仕立てでおもしろおかしく、「間違った頑張り方」や「頑張らずに結果や良習慣を身に付ける方法」を伝えている点で、大人だけでなく、小・中学生でも読むことができる内容だ。

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 物語パートの後には「学びのまとめ・解説」のパートもあり、物語との両面からしっかりと学べる工夫がされている。

■朝、出勤のために洋服選びをするのがNGな理由は?

 物語の内容は、「ガンバル国」の住人(朝から晩まで、とにかく頑張る国民性の人たち)である女性・ミサキが、お隣にある「ガンバラン国」を電車で(笑)訪問し、いろんなタイプの人との出会いを通して「頑張らない国民性を学ぶ」というもの。

 例えば、ミサキが訪問したある家庭では、親子ともども黒いセーターとデニムのパンツでファッションが統一されている。予備もすべて同じ服なのである。

 その理由を問うミサキに、その家のご主人は「人が1日に使える集中力は10回まで」と前置きしたうえでこう答える。

「本当に決めなきゃいけないことのために、決めなくていいことは自動化をしておくんだ。朝、何を着ればいいのかなんてことに貴重なカードは使いたくないからね」

「決めなきゃいけないこと」とは、自分で意思決定しなければいけないことだ。例えば、毎朝毎朝、出勤のための服を「どれにしよう」と選んでいる人は、「なんだかそれだけで気疲れしちゃう」と、思ったりはしていないだろうか?

 それは、服選びといったひとつの意思決定にも、人は集中力を使っているからだ。「1日10回がリミット」という貴重な集中力の1回を、大切なデートならまだしも、毎日通勤する会社に行くための服選びに費やすのはもったいない。

 そこで、服のバリエーションに興味がないこの一家では、お気に入りのコーデ1本でパターン化(自動化)してしまい、服選び以外のことに大切な集中力を使うようにしているのだ。

 コーデ1本というのは極端な例かもしれないが、このモデルを転じて、出勤用の服などは前日の晩にチョイスするか、パターン化をしておいて、できるだけ服選びに迷わないようにする(=集中力を消耗させない)ことが、一日を快適にスタートさせるコツというわけである。

■スポーツジム通いがなかなか続かない理由とは?

 ガンバラン国の住人の生態系は、他にもいろいろとおもしろい点がある。ミサキがすれ違ったある男は、突然、その場で腕立て伏せを始めるのである。

「えっ!?」と驚くミサキに、男は「僕は美人とすれ違ったら、腕立て伏せをすると決めているんだ」と説明する。何でも男は、毎日運動する習慣を身に付けたいと思っていたそうだ。そこで思いついたのが、美人とすれ違ったらその場で腕立て伏せをするというゲームであり、エクササイズだ。

「運動をしたければジムへ通えば?」と問うミサキに、男は、「それでは続かない」とその理由を明かす。男によれば、「ジム通いは、段取り(=アクション)が多すぎる」という。入会する、通う、受付する、着替える、シャワー…などなど。これだけ行動が多いことを習慣にするには、よほどモチベーションの高い人しか続かない、という。

 転じて、自宅や公園、ストリートなど、少ないアクションで運動ができる方法は山ほどあり、そちらをチョイスしたほうが結果(運動する習慣)につながる。つまりこの男が伝えている教訓のひとつは、「習慣化したければ、行動(アクション)はなるべく減らすこと」なのである。

■「つまらない」と感じたら、ゲーム化させて楽しもう!

 そしてもうひとつの教訓は、「美人とすれ違ったら腕立て伏せ」というゲーム性の導入だ。

 仕事でも習慣でも「退屈さ」を感じさせる瞬間がある。そう感じても「やらなければいけない」と無理に頑張って集中力や心身を消耗させてしまうのは、「ガンバル国」の住人だ。

 一方で、ガンバラン国の人たちは、そこに何かしらのゲーム性を自分でつくり、「退屈さ」を「おもしろさ」に変換することで、「無理にガンバラなくても結果が出せる」というわけだ。

 本書には、他にもいろんな要素が盛り込まれており、ガンバラン国が掲げる「ガンバラなくても結果が出せる10カ条」が学べるようになっている。

 ちなみにこれらの10カ条は、著者の川下氏自身が、ダイエット、断酒、適度な運動習慣など、いろんな良習慣を身に付けていく過程で効果のあった、実証済みのメソッドであり習慣化のコツなのだそうだ。

 この春から心機一転、生活習慣の改善を考えている人は多いだろう。「ガンバラなくても結果が出せる」そんな言葉にピンと来た人や、そのコツを学びたい方は、ぜひ本書を手にしていただきたい。

文=町田光