部下に仕事を「丸投げ」してませんか? ダメ部下を作らないためのマネジメント術

ビジネス

公開日:2019/3/29

『部下を持ったら必ず読む 任せ方の教科書 「プレーイング・マネージャー」になってはいけない』(出口治明/角川書店)

 新しい環境に移り変わる春、新しく部下ができたという人も少なくはないだろう。部下を育てるにはどうしたらいいのか。ダメ部下を作らないための、マネジメント術は身につけて損はないはずだ。

 社会人にとって頭を悩まされるのは、業務内容よりも何よりも人間関係だ。特に、上司と部下で良い関係を築くのは難しい。「なんて使えない部下なのだ」と思う経験も少なくはないだろう。だが、上司にとって部下をどう活かすかどうかはアナタのマネジメント能力に掛かっている。

 ライフネット生命保険のCEOの出口治明氏は『部下を持ったら必ず読む 任せ方の教科書 「プレーイング・マネージャー」になってはいけない』(角川書店)の中で、部下へ仕事を任せることこそが会社を強くすると指摘している。出口氏はライフネット生命を「100年後に世界一の保険会社」にするために、性別、年齢、国籍を超え、多様な人達の意見に耳を傾け、部下の長所を伸ばすように仕事を割り振っている。出口氏によれば、「誰が、何を、どこまで(いくらまで)決定できるのか」「自分が負うべき責任は、どこまでなのか」といった権限の範囲をハッキリさせながら権限を委譲すると、企業の決定スピードを早め、部下の能力を高めることができるという。強い野球チームは、サード、ショート、セカンドがしっかりと守備範囲を決めているから、エラーを防ぐことができる。仕事もこれと同様であり、権限をハッキリさせることが大切なのだ。

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 仕事を任せる際に出口氏は、部下に任せた権限は「部下の固有のもの」であり、上司といえども口を挟むことはできないと決めている。上司の管理能力はせいぜい部下2~3人分だ。全ての事案について相談を持ちかけられれば、貴重な時間が割かれ、部下が「ごますり」を始める原因にもなる。上司は広く浅く業務に精通しているが、部下は狭く深く業務を知ることとなる。案をいくつか提示して、どれが良いかという相談をしてきた場合にのみ相談に乗るという方法をとれば、部下の能力を引き出すことができると出口氏はいう。

 だが、「仕事を任せる」といっても、「丸投げ」にしてはいけない。「任せる」には指示を明確にし、権限の範囲も明確にすることが必要である。その際には以下の4つのことを重視すべきだと出口氏は指摘する。

・ 「期限」:いつまでに行うものなのか。
・ 「優先順位」: 何を優先すべきなのか。
・ 「目的・背景」: なぜこの仕事が必要なのか。
・ 「レベル」: どのような質を求めるのか。

 仕事を任せるときに大切なのは、情報の行き違いを防ぐことだ。部下への指示はメモやメールで出す他、伝えたあとで部下に復唱させると良いだろう。的確な指示とは双方向のコミュニケーションのことを示す。「ホウレンソウ」(報告・連絡・相談)をする部下はゴマすり部下ばかりであり、積極的に情報共有すべきなのは、上司から部下に対してだ。誰にどの仕事を任せたのか、期限はいつまでなのか、上司もカレンダーなどに記載し、期限前にフォロー(催促)を入れるようにしよう。

 日本の企業では、例えば「バツグンの営業成績を残した社員が、そのまま長のポストに就く」ことがよく見られる。だが、「プレーヤー」と「マネージャー」では求められる能力は異なる。「プレーヤー」は自分の仕事をひたすら高め、80点を取れるように努力する能力が要求されるのに対して、「マネージャー」は部下全員に合格点(60点)を取らせ、多少の不出来には目をつぶるという能力が重視される。「名選手、名監督にあらず」はスポーツのみならず、ビジネスの世界にも当てはまる。出口氏は、マネージャーは、まずは「部下の仕事については、60点で満足する」習慣を意識してみると良いという。「自分の方が上手くできる」などと思って自ら仕事に手を出してしまうとやるべき仕事量が膨大になってしまう。部下を育てて、全員が60点をとれるようにすれば、あとは65点、70点と上を目指していけば良いのだ。

 上司にとって、部下は悩みの種だ。部下を上手く使うためには、広い度量を持って、仕事を託さなくてはならない。そして、多くのコミュニケーションを取りながら、異星人にも思える若手社員の能力を活かすことこそ、会社の未来を生み出すことなのだろう。

文=アサトーミナミ