豚肉調理で注意すべきは○○のし過ぎ!? 「分とく山」の野﨑洋光が教える“おいしい法則”

食・料理

更新日:2019/5/7

『おいしく食べる 食材の手帖』(野﨑洋光/池田書店)

 年中豊富な食材が手に入る現代。調理器具もどんどん進化し、より簡単に使いやすくなっている。そんな今、大人気日本料理店「分とく山」の総料理長・野﨑洋光さんが著者を務める『おいしく食べる 食材の手帖』(池田書店)で、料理をする上で知るべきは食材と調理法の「簡単な知識」だと、野﨑さんは説く。本書は、「美味しさ」を最大限引き出す選び方や扱い方、調理法を食材ごとに図入りでわかりやすく紹介したもの。切り方や加熱の仕方の理由がプロの目線で解説されており、何気ない作業に込められた意味に目からウロコが落ちることも多い。本稿では、そんな食材をおいしく食べるための知恵の一部をご紹介しよう。

◆時期や部位で扱い方が変わる「キャベツ」

 食卓にあがる回数の多い野菜だからこそ、改めて基本を見直したい「キャベツ」。しかしキャベツと一言で言っても、春キャベツと冬キャベツでは特徴がまったく違う。春キャベツなら空気を含んだふわっと軽いものを、冬キャベツなら葉がみっちり詰まった重いものがオススメ。また、千切りにする際は繊維を断ち切る方向に切ると、ふわふわした食べやすい食感に仕上がる。外葉か内葉かによって味も特徴も違うので相性のいい調理法も変わってくる。選び方、扱い方次第で大きな差が生まれるのだ。

◆「豚肉」で見るべきところは、脂肪の色

 豚肉は、部位や切り方に関わらず、脂肪の色が純白のものを選ぶことが大切。赤身の色がピンクであること、ドリップが出ていないこともチェック要素だ。肉は過加熱によって固くなり、うまみが抜けてパサついてしまう。おいしく食べるためには、肉が柔らかく仕上がる適正温度65~80度での加熱をキープすることだという。焼く、煮る、茹でる、揚げる、それぞれの調理法ごとに「加熱しすぎ」を防ぎつつも火を通すコツがあり、また料理の味付けに合わせた下ごしらえもある。コツが違うと思うと難しく感じるかもしれないが、いずれもシンプルな方法ですぐに覚えられるし、何より目的はただ過加熱を避けることだけ。それだけで段違いのおいしさが生まれるのだ。

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◆「卵」は洗ってはいけない!?

 普段何気なく使っている卵だが、日常的に使うものだからこそ使い方をマスターしておきたい。まず、卵は尖った方を下にして保存すること。丸い方には空気が入っているため、そっちを下にすると卵黄が空気に触れやすくなる。そうなると細菌の侵入リスクが高まってしまうのだという。また、卵を洗って使う人をたまに見かけるが、実はこれもNG。菌を防いでいる薄い膜が破れたり、殻に空いた小さな穴から水を通じて菌が入ったりする危険があるとのこと。保存方法のほかにも、卵をおいしく半熟に仕上げる最適な温度や調理法、なめらかな茶碗蒸しにするための卵と水の割合なども紹介されている。

◆「さば」は、加熱しすぎるとまずくなる!

 さばはもともと非常に傷みやすい魚。しかし近年は流通が発達したことで鮮度の高いさばが手に入るようになったため、短時間でさっと調理してさば本来の味を活かしたほうがおいしいそう。また、最近大人気の「さば缶」には、骨まで食べられるというメリットがある。うまみも強いため、出汁としての役割も果たしてくれて非常に重宝する。保存がきくのもうれしい。その時々で生と缶詰をうまく使い分けると、より充実した食生活を送ることができる。

 どれも本当に何気ないことばかりだが、この少しの差が大きな味の差に繋がる。この『おいしく食べる 食材の手帖』には、ほかにもご飯のおいしい炊き方や調味料、出汁の種類、本書内で紹介されている食材の基本情報など、普通の人でも知っておきたいプロの知識がぎゅっと凝縮されている。今冷蔵庫に入っている食材、そういえば正しい保存方法、調理方法が分からないな…と思った人は、ぜひこの本で基本に立ち返ってみては?

文=きこなび(月乃雫)