推しへの愛はあっても貯金ゼロのオタクに送る、『一生楽しく浪費するためのお金の話』

暮らし

2019/4/6

『一生楽しく浪費するためのお金の話』(劇団雌猫、篠田尚子/イースト・プレス)

 雨にも負けない、風にも負けない、残業にも給料日前の空腹にも負けない。東で推しのコンサートがあれば行って応援し、西に限定グッズがあると聞けばすぐさま駆けつけ手に入れる。観劇前は推しのファンとして恥ずかしくないよう奮発コスメと新しい服で身なりを整え、イベント後は同志で集まり、推しへの愛と美味いものを噛み締める。そういう恒久的なATMに、私はなりたいッ……!

 そんなふうに思えるのは、愛ゆえの消費が楽しいから。けれど、ちらりと不安がよぎることもある(クレカの請求額を見たときとか)。「生きるために必要な推しごとだけど、この先も浪費を続けられる?」「貯金とか保険、なんにも考えてないけどどうしよう?」。そう感じたことがある人は、ぜひこの本を手に取ってほしい。『一生楽しく浪費するためのお金の話』(劇団雌猫、篠田尚子/イースト・プレス)──なんとも頼りになるタイトルではないですか。この本によると、推しへの愛はあふれんばかりにあるけれど、貯金もお金の知識もゼロ、そんな私たちでも、推しを支え続ける&将来に備えることが可能になるというのだ!

 本書の画期的な点は、「節約」を推奨する内容ではないというところ。著者は『浪費図鑑―悪友たちのないしょ話―』(劇団雌猫/小学館)などで知られる劇団雌猫、つまりはオタクの生態と消費行動を知り尽くしたグループだし、さらに彼女たちにお金の知識を授けるのは、みずからもオタクのファイナンシャルプランナー・篠田尚子さん。間違っても、「そのグッズ、本当に必要ですか?」「同じ公演を二度見るのはやめて、一回分は貯金に回しましょう」なんていう愛のない提案はしない。「いつまでも、いると思うな親と推し」。それをきちんと理解している彼女たちだからこそ、娯楽に使うお金を一切(!)我慢せず、それでも「貯めて増やす」ことが可能になるエッセンスをしっかりと学ばせてくれる。

 その魅力を実感していただくために、劇団雌猫のメンバー・もぐもぐさんと、篠田さんのやりとりを紹介しておこう。

もぐもぐ でも、巷のそういう本だと「浪費は敵」じゃないですか! 私たち自慢じゃないけど、貯めるより使うほうが100倍得意ですよ!

篠田 そんなことはないですよ。むしろ、お金を使うということに、過度に後ろめたさを感じないでほしいと思います。日ごろからお金を使う人は、その価値や尊さをよくわかっています。たとえば、先ほどのみなさんの会話にも、遠征時の交通費やホテル代の会話が出ていましたよね? いくらくらいなら妥当な水準か、瞬時に判断して、切符を買ったり、部屋を押さえたりしていると思います。(中略)特に目的もなくひたすら貯め込む人の方が、適正な水準がわからず無駄な出費をすることがあります。だから私は、『使う人は貯められる』と思っています。

 ……ね、元気出てきたでしょ?

 給与明細の読み方、年金や保険のこと、資産運用に至るまで、いい大人なのに知らないなんて赤っ恥だと思っていた基礎の基礎から噛み砕いて教えてくれる本書。不景気な話ばかり聞く今だからこそ、楽しく推しに散財しながら、さらにお金を増やしていける、“健やかな浪費生活”を目指しましょう!

文=三田ゆき