「最高のラストだわこれ…」大ヒットダークファンタジー『デビルズライン』の本編がついに完結!

マンガ

更新日:2019/6/13

『デビルズライン』(花田陵/講談社)

「俺には帰る場所がある」

 鬼と呼ばれる吸血鬼が存在する世界を描いた『デビルズライン』(花田陵/講談社)が、単行本13巻でついに本編が完結を迎えた。

 2013年から5年間の連載で、累計発行部数は240万部以上、2018年にはアニメ化もされ、名実ともに大ヒット作品となった。

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“鬼ハーフ”が事件と陰謀に立ち向かうダークファンタジー!

 本作は現代に鬼という生物が密かに存在し、人間と共に生きている、という設定。彼らは見た目にはヒトと変わらないが、血をみることや匂いをかぐことで“吸血欲”が発動。これによりたびたび事件を起こしてきた。

 日本政府は鬼の研究を行い、鬼とヒトとのハイブリッド計画をすすめていた。そこで鬼の男性とヒトの女性から生まれたのが主人公、安斎結貴(あんざいゆうき)だった。

 安斎は吸血欲が乏しく、鬼と人間のハーフとして順調に成長。警視庁公安五課に所属し、鬼関連の事件を担当していた。

 物語はある事件で被害者になった平つかさ(たいらつかさ)と安斎が出会うところから始まる。

 安斎は吸血欲の制御を行いながら、鬼を抹殺・絶滅しようとする組織的陰謀、そして鬼排斥の機運が高まる社会と向き合い、戦っていくーー。

 また鬼の存在を知る政府の中では、彼らを擁護する者、事件を起こす危険性から排斥したい者、それぞれが暗躍していた。

 ヒトの社会では鬼はマイノリティですらなかったが、その存在が明らかになるにつれ、彼らとの共生については賛否が分かれる。

 社会が鬼という新しいマイノリティと向き合い、変わっていく。これも本作のみどころのひとつだ。

種族を超えた恋人たちの葛藤

 この作品では多くのカップルが描かれる。

 まずは鬼である安斎とヒトであるつかさ。お互いに惹かれ合い、愛し合うようになる2人以外にも、エカと神崎、ジュリアナ・ロイドと沢崎など、鬼とヒトとの異人種カップルが登場する。

 鬼とヒトは付き合うことも結婚することも可能である。ただ鬼は血以外でも、吸血欲が高まり我を忘れる状態(変異)になる。それは興奮しアドレナリンが出ることだ。つまり愛することは危険をともなう。大事な相手を傷つけてしまうこともありうる。

 物語ではそんなつらいカップルを描いたエピソードも描かれた。それでも彼らは愛し合うのだ。

 ある鬼は自分がヒトでないことをひた隠す。ある鬼はカミングアウトする。いずれも我を忘れることにおびえつつ、相手を愛そうとする。作中ではこの葛藤が繰り返し語られる。

 さらに本作では、信念や命をかけた極限の戦いの中で、ヒト同士のカップルも複数誕生する。

彼らはどこで生きる? 愛の行方は? ファン納得のラスト

 この13巻で物語は終わる。ここではもちろん結末は書かないが、本稿冒頭のセリフ「帰る場所」や、作中何度も出てくる「居場所」という概念が丁寧に着地しており、多くのファンが納得できるラストなのではないだろうか。

 そして安斎とつかさも含む恋人たち、彼らの愛の行方もしっかりと描かれるので、ぜひ楽しみにしてほしい。

 なお本編は13巻で終わるものの、番外編エピソードが収録された14巻も発売される。まだまだ楽しめる『デビルズライン』の世界に、今からでもどっぷりとハマってみることをおすすめしたい。

文=古林恭