セックスレス夫婦を描き話題沸騰中『あなたがしてくれなくても』待望の最新巻で、ついに…!

マンガ

更新日:2019/6/13

『あなたがしてくれなくても』(ハルノ晴/双葉社)

 複数のベストセラーランキングで1位を獲得、売り上げ累計180万部突破と話題沸騰中のコミック、『あなたがしてくれなくても』(ハルノ晴/双葉社)。2019年3月、この大ヒットコミックの第3巻が発売された。

 主人公の吉野みち・32歳は、3歳年上の夫・陽一とふたり暮らし。結婚して5年、夫婦仲は悪くない──が、ひとつだけ、みちにとっては足りないものがあった。それは、セックスだ。

 夫婦のあいだにセックスがなくなって2年、陽一はみちと向き合おうとしてくれない。新しい下着をつけてみたり、思いっきりおしゃれをしてみたりと、試行錯誤している自分がバカみたいだ。このまま、女として終わっていくのだろうか。そんなふうに考えていたみちだが、ひょんなことから、会社の先輩・新名誠も、妻とのセックスレスに悩んでいると知る。

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 ただセックスがしたいわけじゃない。愛する人と、気持ちを確認し合える行為だからこそ、セックスがしたいのだ。一番そばにいてほしい人に振り向いてもらえないのでは、一緒にいても、心はずっとひとりのまま…そんな胸中を少しずつ明かし合っていくうちに、みちと新名は近づいていく。おたがいの存在を支えとして、ふたりはそれぞれの夫と妻に、自分なりのやりかたで歩み寄ろうとするのだが。

 最新巻の第3巻は、その試みの結果が判明したところから物語が展開していく。

 新名は、なんとか状況を打開しようと計画した結婚記念日のデートで、妻に冷たく拒絶される。同じ悩みを抱えるみちには、切ない表情を浮かべる新名の深い苦しみがわかってしまう。一方のみちも、形の上ではセックスレス解消に向かうかと思えたものの、それ以上に深刻な問題が見えてきた。みちと新名は、傷を舐め合うようにたがいを求め、保ってきた距離を急速に縮めてゆく。

(c)ハルノ晴/双葉社

(c)ハルノ晴/双葉社

(c)ハルノ晴/双葉社

(c)ハルノ晴/双葉社

 もっと一緒にいたい、キスをしたい、触れ合っていたい。けれど、これ以上進んでしまったら、すべてを失うかもしれない。愚かなことだとわかっていながら止められないのは、きっと飢えていたからだ。セックスがしたかったのではない、自分たちは、愛する人に、こちらを向いてほしかったのだ──そう気づいてしまったみちと新名は、その願いを満たしてくれる相手が夫/妻ではないかもしれないと考えたとき、どんな決断を下すのか。

 やるせないのは、みちと新名のパートナーも、伴侶との関わりにおいてそれぞれに悩みを抱えていることだ。大人の恋愛下手とも言えるみちの夫も、やりがいのある仕事に就き多忙を極める新名の妻も、パートナーを愛していないわけではない。いや、むしろ、妻/夫を愛しているからこそ悩んでいる。

“セックスレス”というひとつの事象を、夫の立場からも妻の立場からも描くことで、「愛されたい」という普遍的な人間の欲求をあぶりだす本作。わたしたちは、登場人物たちとともに悩み、苦しむことで、“愛”のままならなさと奥深さ、そして、その困難なものが成就することの奇跡に、あらためて気がつくだろう。

文=三田ゆき