お小遣いはあげない! 全米No.1バンカーが教える、お金に強い子どもを育てる最新メソッド

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更新日:2019/5/7

『全米No.1バンカーが教える 世界最新メソッドでお金に強い子どもに育てる方法』(酒井レオ/アスコム)

 テクノロジーやグローバル化がものすごいスピードで進んでいる昨今、子育てにも時代にあわせた最新のメソッドが必要だろう。『全米No.1バンカーが教える 世界最新メソッドでお金に強い子どもに育てる方法』(アスコム)は、アメリカの大手銀行で全米営業成績No.1に輝いた経歴を持つ酒井レオさんが、お金に強いグローバルな子どもを育てるための方法を紹介する1冊だ。10歳くらいまでの子どもが対象となっている。

 酒井さんは、ニューヨークで商売をする日本人の両親のもとに生まれた日系アメリカ人。国連大学の幼稚園に通っていたことから、国際色豊かなエリート家庭に囲まれて育った。フェイスブックのマーク・ザッカーバーグやグーグルのラリー・ペイジに代表されるユダヤ人のコミュニティと触れ合うことも多かったという。そのため、酒井さんのメソッドには自身が体験してきたことのほかに、世界のトップエグゼクティブだけが知る子育て法も盛り込まれている。

 基本はお金にまつわる子育て法だが、世界で通用する魅力的な人間になることを指南するような記述もある。なぜなら、いまから10年もたてば日本はさらにグローバル化し、日本の子どもたちも世界に飛び出していく必要があるからだ。よって本書は、これからの子どもたちに欠かせない「お金に強くなること」と「世界で活躍できること」の2つが軸となっている。

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■「0歳からスマホに触れさせてOK」が世界基準

 ニューヨーク育ちとはいえ、両親から日本の文化を教わってきた酒井さん。アメリカ人でありながら日本の心を持ち、日本の良いところも悪いところも知ったうえで、常に日本を客観的にとらえている。時には、日本の子育てが滑稽に映ることもあるようだ。

 たとえば、小さな子どもを持つ親の間で必ずといっていいほど話題になる「スマホ」問題。日本では「小さな頃から使うのは脳に良くないのでは」などと極力見せないことが良しとされる風潮だが、酒井さんはそれを「何の科学的根拠もない都市伝説」と指摘し、「興味を抱くならば0歳から触らせてもいい」とすすめている。

 いまの時代、テクノロジーの進化は誰にも止められないのだから、どう共存していくかを考えるべきであり、いま語るとしたらイエスかノーかではなく、コントロールの問題だという。心配ならば時間やシチュエーションを制限すればいいし、長く使いつづけてもいいと親が判断したのならそれでもいい。むしろ、絶対にダメだと厳しく規制して反動が大きくなった、ということはよくある。

「世の中にある便利なものは、なるべく早く触れさせたほうが扱い方を学ぶし、変な執着も生まない」「むしろ、0歳から始めた場合と5歳からスタートした子の差を埋めるのは難しい」というのが酒井さんの考えだ。

■どんなに苦手でも算数だけは嫌いにさせない

 日本でお金のことばかり話すのはタブーかもしれないが、世界がお金で回っているのは事実だ。ユダヤ人家庭では、子どもの頃からお金の教育が徹底的に行われている。たとえば、ユダヤ人家庭の多くは、子どもにお小遣いを渡さない。掃除や買い物など家の仕事を手伝わせ、「トイレ掃除10円、食器洗い20円」など対価としてお金を渡す。さらに、収入として渡したお金の中から、部屋代や食事代を親に支払わせている家庭もある。

 もちろん世間の相場とは違って「部屋代300円、食事代1000円」といった家庭内の基準でかまわない。中には、親のマッサージなどで臨時収入を得たため、食いっぱぐれなくて済んだ…という酒井さんの同級生による笑えるエピソードも。社会の縮図として家庭内でもお金を回すことで、子どもは否応なくお金に強くなっていくだろう。

 酒井さんは「数字で世の中を見る」こともすすめている。たとえば、子どもとの会話で、「クラスのみんながこの鉛筆を使っているから自分も欲しい」と言われるのと、「クラスでは38人中26人、およそ7割がこの鉛筆を使っている」と説明されるのでは、どちらが説得力を持つだろうか。答えは後者だろう。

 数字で考えると物事が整理され、直面する問題や課題が浮かび上がってくる。世界で活躍する人たちと会話をするときにも役立つし、あいまいなものを好む日本人こそ○か×で答えの出る数学的思考を大事にするといい、と酒井さんはいう。算数が苦手な子どもは、好きにならなくてもいいから、せめて嫌いにさせないことだ。

■日本はこのままではヤバイ。まずは親が変わろう

 世界経済やビジネスシーンについても語られる本書では、親世代に向けた厳しい意見も多々あった。酒井さんに言わせれば、日本のビジネスパーソンは「このままだとヤバイ」。「肩書きばかり主張して、中身が空っぽ」と、気を悪くされる人もいることを承知で、世界から見た日本人のイメージを告白している。

 日本人はグローバル化といいながら自国に対するアイデンティティが育っておらず、日本の文化を語れない幼稚なところがある。その割には、日本の企業が世界の経済界を席巻していた30年以上前の昭和の日本を引きずって、今でも日本がアジアのトップであると勘違いしている…。ビジネスシーンの会議室でも、日本人だけが隅のほうでポツンと孤立しているという。

 子どもは親の真似をするものだから、まずは親自身が日本人のあり方や世界経済に目を向け、グローバルに変わっていくことが必要だろう。そういった意味では、本書はビジネス書としても大いに役立つ。

「世界で日本が置かれている状況を正確に把握してほしい。今、行動しなければ日本が危ない。日本の子どもが世界で置き去りにされていく」

 自分のルーツである日本と日本人が大好きで、日本人がビジネスの現場で苦しんでいる姿をこれ以上見たくない、という想いから、酒井さんは本書を書き下ろしている。厳しい言葉の中にも思いやりを感じるのは、そういうことだ。コミュニケーション力を上げるための提案などは、愛されるべきキャラクターの酒井さんだからこそ信頼できるところがある。

 親だって、自分の子どもが世界から置き去りにされるのを見たくはないはずだ。手遅れにならないうちに、親子の末長い幸せのためにも、本書を強くおすすめする。

文=吉田有希