塾・書店のない秋田県の村が学力日本一を誇るのには理由があった…! 家庭学習にも取り入れられる学習法とは

暮らし

2019/4/20

『「学力日本一!」秋田県東成瀬村のすごい学習法』(主婦の友社)

 教育の世界では、秋田県の学力が高いことはよく知られている。秋田県の子どもたちの勉強ができる理由は、さまざま論じられている。意見を俯瞰すると、「これをしているから学力が高い」と絞るのは難しそうだ。とはいえ、学力の高さでこれほど注目を集めるということは、何らかの取り組みや工夫が成功しているのだ。そのうちの1つでも家庭学習に活かすことができれば、わが子の学力が向上するはずだ。

 2007年に再開された「全国学力テスト」で8年ものあいだ1位を維持している秋田県の中でも、トップクラスの学力を誇るのが人口2600人、村の93%が山林という「東成瀬村」だ。この小さな村には書店もなければ民間の塾もない。国内外からの視察が止む気配はないこの「学力日本一の村」は、どんな教育をしているのか。このほど、東成瀬村が行っている教育のすべてを徹底的に取材し、取り組みをまとめた『「学力日本一!」秋田県東成瀬村のすごい学習法』(主婦の友社)が出版された。本書には東成瀬村の授業の工夫、独自のノートの取り方、自主学習の方法などが紹介されているが、特に興味深いのは、家庭学習にも活かせそうな“自主学習ツール”だ。

■子どもが勉強内容を自分で決める「自主学習ノート」

 東成瀬村で唯一の小学校「東成瀬小学校」の子どもたちは、毎日、進んで自主学習をする。その背景には、同校が取り入れている「自主学習ノート(自学ノート)」にありそうだ。子どもたちは毎日、宿題とは別に、自分で勉強する内容を決め、この自学ノートを使って家庭学習に取り組む。自学の内容は復習、苦手部分のおさらい、漢字や計算の練習ほか、何でも良い。自学ノートは市販の10ミリマス目タイプのノートを使用しており、特段変わったところはない(高学年は7ミリ横罫のノートを使用)。注目すべきは、ノートの書き方だ。

 自学ノートは、画像のとおり、必ずこの5つの構成で書くことをルール付けしている。

(1)日付(◯月◯日)を書く

(2)取り組む内容を書く

(3)取り組んだ時刻・時間を書く

(4)めあてを書く

(5)振り返りを書く

 日付を書くことで「いつ」の勉強だったかを思い出せ、復習の効果や効率性が上がる。取り組む内容を書くことは、自分で学習計画を立てる力の基礎づくりになる。取り組んだ時刻・時間を書くことで、学年に応じた勉強時間ができたかの確認になる。勉強時間の目標は、低学年で30〜60分間、中学年で45〜70分間、高学年で70〜90分間と定められている。夜更かしの傾向にないか、毎日同じくらいの時間に実施できているかなどを大人がチェックできる利点もある。めあては、これから自分が何を、どんなふうに取り組むのかというビジョンを意識して学習するために書く。そして、振り返りは、子ども自身が今日どれくらいのことができ、次にどうつなげたいのかを意識するために書く。

■すべての子どもが毎日自学ノートに取り組める工夫

 自学自習は学力を伸ばす。毎日、自学ノートに取り組むことで子どもの学力が上がることには納得してもらえると思うが、不思議なのは、どうしてすべての子どもが毎日自学ノートに取り組めるか、ということではないだろうか。これにも同校の工夫がいくつか凝らされている。

 例えば、校内に自学ノートの展示・閲覧スペースをつくり、子ども間で刺激を与え合ったり、先輩が後輩に自学ノートのアドバイスをする機会を設けたり、優秀な自学ノートを表彰する「自学コンクール」を開催したりしているが、子どものモチベーションを最も高めるのは、身近な大人がページに目を通してくれることなのかもしれない。

 同校の先生方は、全校児童が取り組んだページを読み、すべてにコメントを返す。膨大な作業量になると予想されるが、疑問に思うのは、先生が日中にコメントを返す時間をどうやって作っているか、ということではないだろうか。

 これを解決する工夫はシンプルだ。その日中にノートを返すことはしない。子どもたちを帰したあとに、添削し、コメントを書く。自学ノートは子ども1人が2冊持ち、ローテーションで使っているのだ。

 東成瀬小学校の自学ノートの使い方は、全国の家庭でも応用できるのではないだろうか。今は、親も子どもも忙しい時代。親が家庭学習を見てやれる時間を取るのが困難な家庭は少なくない。この本にはテストの点が10点上がる、志望校への合格可能性が上がる、といった特効薬的なノウハウやテクニックは書かれていない。だが、子どもの真の学力をどう伸ばすかのヒントがある。

文=ルートつつみ