ゲス不倫、SMAP解散、トランプ政権。あのお騒がせ事件を林真理子が語る!

文芸・カルチャー

2019/4/27

『下衆の極み』(林真理子/文藝春秋)

 林真理子先生といえば、『西郷どん!』や『不機嫌な果実』、『ラブストーリーは突然に』など誰もが知る名著やドラマの原作を書いた人気作家。人間の感情のどろどろした部分まで描く奥行きのあるストーリーに定評のある林先生が『週刊文春』に書いているエッセイが文庫化された。

『下衆の極み』(文藝春秋)は、ゲス不倫、SMAP解散、トランプ当選などが世間を騒がせた頃の連載をまとめたもの。林先生独自の目線で話題の事件を語った内容は何とも痛快だ。

 林先生の文章にはいい子ぶった“忖度”は一切存在せず、Twitter、InstagramなどSNSが作る“トレンド”にも惑わされない。時には掲載誌である『週刊文春』ですら批判の対象になる。

 近頃は何を発言するにも“炎上”を気にして各方面に気を使う空気がある中で、林先生の歯に衣着せぬ物言いは新鮮に感じるし、気持ちがいい。

 ベッキーとゲスの極み乙女。の川谷絵音の不倫発覚を皮切りに、不倫をしている芸能人が一斉に吊るし上げられた“ゲス不倫”報道についても、世間の「不倫はよくない」「最低だ」という意見とは逆を行っている。作家としては「不倫の何が悪いの?」と思いながら、不倫の話を書いているという。

 特に『五体不満足』の著者、乙武洋匡氏の不倫報道についてのエッセイは、読んでいて目からウロコが落ちた。彼は不倫報道がある前は国民的な“いい人”で、不倫が発覚する前は自民党が擁立を宣言していたほどイメージがよかったので、世間は「乙武さんが不倫するなんてひどい。いい人だと思っていたのに」と口々に批判したが、筆者も心の中で世間と同じように考えていたからだ。

「奥さんは泣かせただろうけど、モテるのは仕方ないよねー。ま、よくやったよ」と、私は彼の肩を叩いてやりたい。(中略)もし政治家になるとしたら、それもいいと思う。そしてどうか「障害者の福祉専門」なんかにならないでほしい。したたかでずるくて強い政治家になって権力を握り、「乙武ってやな奴」と憎まれるぐらいになってほしい。(中略)今だって乙武くんは、人から恨まれる初めての障害者になりつつあるのだから。
(pp71〜75「乙武くんへ」より)

 不倫の話の中で、人々が障害者には悪口を言ってはいけないというタブーを無意識に作り出している点を指摘したのだ。言われてみれば本当に、そんなタブーを作り出していること自体がおかしな話であるし、そこに自覚がない自分が怖いとすら思う。

 何か起こると悪者を探してSNSで叩きまくる不寛容さや、いいね!をもらうための周囲に配慮のない撮影をする人、流行りものにはとりあえず乗って、赤信号もみんなで渡れば怖くない…。最近の世の中の空気に違和感を覚えている人はきっと本書に共感し、楽しめるはず。

 エッセイの題材は誰もが知る芸能ゴシップがほとんどで、ひとつ5〜6ページほどの分量。「『西郷どん!』は長いかも」という人もさらっと手軽に読めますよ。

文=箕浦 梢