かけひきを楽しむゴリラ…動物たちの赤裸々な恋愛事情を解説する『どうぶつ恋愛図鑑』

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更新日:2019/5/10

『どうぶつ恋愛図鑑』(大渕希郷/東京書店)

 人類にとって恋愛は永遠のテーマだ。“好き”と“嫌い”という2つの感情の間を、グラデーションのごとく無限の心模様が行ったり来たりして、2人の関係を儚く美しく彩る。恋は面倒くさくて悩ましくて、楽しい。

 一方、動物にとって恋愛は子孫を残すためのビッグイベント。恋の季節になると彼らは異性に全力でストレートにアピールする。その恋愛模様は単純なようで、実は奥が深い。

『どうぶつ恋愛図鑑』(大渕希郷/東京書店)は、動物の多種多様な求愛行動を図鑑にして分かりやすく解説する。動物の恋愛事情を赤裸々に語る本書だが、読み進めると人間の恋愛の参考になるのではないかと感じた。気になるその模様を、本書より少しだけのぞいてみたい。

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■強いオスがハーレムな生活を送るライオンの豪快な恋愛

 百獣の王・ライオンの恋愛はとっても豪快だ。オス同士でケンカをして、勝ったほうがメスを手に入れ、「プライド」と呼ばれる群れのリーダーになる。群れにはリーダー1頭につき10頭前後のメスがいて、ケンカに勝てば自分のもの。

 いいな~…と人間が言ってはいけないけど…やっぱりうらやましいな~。さすがは百獣の王。強いオスはハーレムな生活ができて、自分の子孫をたくさん残せる。モテたければ強い男になれ! とてもシンプルで分かりやすい恋愛論だ。

■「恋鳴き」で駆け引きを楽しむゴリラの恋愛

 同じ強い動物でも、ゴリラは繊細な恋愛を行う。オスがメスに気持ちを伝えるとき、胸をポコポコ叩いてドラミングを行う。これを「恋鳴き」というそうだ。

 恋鳴きをメスが受け入れてくれればカップル成立。しかしメスが受け入れてくれないときは、オスがめげずに何度もアピールする。メスが逃げてはオスが追いかけ、恋鳴きしては相手の反応を見極め、駆け引きを楽しむように相性を確かめ合う。

「わたしをつかまえて」と言わんばかりのメスの行動は、人間の恋愛と似ていて愛くるしい。けれども嫌がるメスをしつこく追いかけるオスの姿も想像できて、ストーカーな一面があるのかも? やっぱり恋をするならば、逃げる女性が立ち止まり振り返ってくれるような駆け引きがしたいなあ、と感じる。

■動物の世界も「モテる男は多彩で気配り上手」

 人間界のモテる男は、多彩な趣味を持っていたり気配りができたりする。それは自然界の恋愛も同じようだ。

 オーストラリアに生息するコトドリのオスは、求愛の鳴き声でメスを誘う。その鳴き声のほとんどは他の鳥の鳴きマネで、マネが上手いほどモテる。恋愛の達人になると90以上ものレパートリーがあるとか。モノマネ芸人さんも顔負けだ。そりゃモテますわ。

「清流の宝石」と呼ばれるカワセミは、オスがメスに小魚をプレゼントして愛を証明する。このときオスはメスが食べやすく、なおかつ飲み込みやすいように、魚の頭がメスを向くようにして口渡しする。「プレゼントは渡すモノよりも、渡し方が大事だよ」。カワセミ先輩からそんなアドバイスをもらった気がした。

 このように動物の恋愛模様は多岐にわたるのだが、どの求愛行動にも共通点がある。それはメスの気を引くため、オスが一生懸命になること。自分が強いオスであることを、よりよい遺伝子を残せることを証明するため、あの手この手を使って必死にアピールするのだ。

 これは紛れもない愛ではないか。読んでいて胸がキュンキュンする。人間の恋愛も動物のようにストレートで力強ければ、きっと届くに違いない。本書から勇気をもらえたようで心強い。

 動物の恋愛事情を紹介する本書は、人間の恋愛のお手本になる1冊だった。恋に悩む私もあなたも、動物に倣ってあれこれ迷わずストレートに、恋に全力で突っ走りたい。

文=いのうえゆきひろ