米朝はなぜ急接近した? いまさら聞けない3つのニュースが『マンガでわかる地政学』でわかる!

社会

2019/4/24

『マンガでわかる地政学』(茂木誠:監修、武楽清・サイドランチ:マンガ/池田書店)

 複雑さを増す世界情勢。歴史的な視点で因果関係を捉え、その仕組みを理解しようと、ここ数年「世界史本」がちょっとしたブームとなっているが、同じく世界を理解する手段として、「地政学」も注目を集めているのをご存じだろうか。

 地政学とは地理的条件が国際関係にどう影響するかを考える学問領域。地政学を知ると国の行動基準や、どうして争いが起こるのかがわかるようになる…といってもなかなかイメージがわきにくい? 

『マンガでわかる地政学』(茂木誠:監修、武楽清・サイドランチ:マンガ/池田書店)は、タイトルの通り、マンガの親しみやすさで抵抗なく、「地政学」の世界に入っていけるはずだ。

 ちなみに地政学の基本原理は大きく以下の3つ。その視点で世界を見れば、複雑に見える世界情勢もわかってくる。

●原則1:国家の行動原理は生き残りである
イギリスはなぜEUを脱退するのか?

 地政学ではイギリスのように島国、海洋国家で、海上貿易に依存する海軍力重視の国を「シーパワー」、ロシアのように大陸国家で陸続きの国境があるため必然的に陸軍力を重視するようになった国を「ランドパワー」と呼び、この2つのせめぎあいが世界を動かすダイナミズムになると考える。

 冷戦中は欧州連合(EU)に参加して市場の確保を図ったイギリスだが、冷戦後にはランドパワーのドイツが圧倒的な経済力でEUを支配。さらに近年は巨大なランドパワーであるロシアとも接近し、いわば「ランドパワー同盟」が出現したことでイギリスが大いに危機感を覚えたことが、EU離脱のベースにあると考えられる。もともとユーロの導入の拒否や欧州連合基本権憲章にも不参加と、イギリスにとってEUは「国益を守るための道具」でしかないのも大きなポイント。

 だからこそ移民の大量流入で国益が圧迫する懸念が高まると、大胆にも離脱へと舵が切られたわけだ。まさに「自国の生き残り」をかけた大きな賭けだが、その結果はいかに!?

●原則2:隣国同士は対立する
ロシアと日本はどうなる?

 北方領土をめぐって対立がつづく日露関係。海を隔ててはいるが、ロシアは国境を接する隣国であり、まさに「隣国同士は対立」という地政学の原則通りともいえる。ロシアはランドパワー陣営の超大国であり、その存在はシーパワー陣営にとっては脅威であり、もし日本がランドパワー陣営に組み込まれてしまったら一大事…と一番警戒しているのは実はアメリカだ。彼らにしてみれば日露、日韓、日中が領土問題でもめているくらいがちょうどいいのかもしれない。

 だが、現在のトランプ政権は孤立主義であり、日本外交にフリーハンドが与えられつつある。領土問題にばかり注目が集まりがちだが、ロシアの保有する豊富な資源は見逃せない。いかに互恵的な関係を築いていけるか、今後の政府の動きを注視したい。

●原則3:敵の敵は味方
米朝はなぜ急接近したのか?

 朝鮮戦争で共闘し「血の盟友」と誇っていた北朝鮮と中国も、地政学的には隣国で敵対関係。中国が何度も朝鮮半島に侵攻した歴史もあり、実は北朝鮮のベースには常に警戒モードがある。近年、その中国が北朝鮮の仇敵である米韓と関係を強化、同じく後ろ盾となっていたランドパワー陣営のロシアもソ連崩壊後は経済力の低下から北朝鮮を庇護する余裕をなくしたことから、北朝鮮は孤立して核保有の道を選んだ。

 そして現在、巨大な市場を目当てに韓国は露骨にアメリカから中国へ乗り換えようとする勢い。ランドパワーの勢力拡大に神経を尖らせるアメリカにとって、北朝鮮と歩み寄ることはその牽制にもなる。先の会談は共同宣言なしに終了したが、今後の行方は日本にとっても大きな問題だ。

 本書はこうしたメカニズムを米英独、中国・韓国・北朝鮮・ロシアといった日本の近隣国、さらにフランス・イスラエルなど地政学的に注目すべき8カ国について、各国の観点からわかりやすく解説してくれる。それぞれの国が抱える地理的条件を理解した上で地政学的に世界を見直すと、一見複雑な関係がスムーズに理解できるようになってくる。最終章は日本の分析だが、今後の道筋をどう考えるかまで見えてくるだろう。知れば知るほど世界がわかる、エキサイティングな一冊だ。

文=荒井理恵