プーチンも在籍したKGBの記憶術演習を公開!命懸けのビジネススキルを身につけよ!

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更新日:2019/5/15

『KGBスパイ式記憶術』(デニス・ブーキン、カミール・グーリーイェヴ:著、岡本麻佐子:訳/水王舎)

 スパイの装備と聞くと何を思い浮かべるだろうか。映画や小説のイメージだと、ペン型レーザー銃やライター爆弾のような秘密の道具かもしれない。しかし実際にスパイにとって一番大切な相棒は、そんなに派手なものではない。それは本人の頭脳、さらに言えば記憶力だという。

 今年2月に発刊され話題となっている『KGBスパイ式記憶術』(デニス・ブーキン、カミール・グーリーイェヴ:著、岡本麻佐子:訳/水王舎)をしっかりと読んでレッスンを積めば、あなた自身の中に「スパイの脳みそ」を開発することができるかもしれない。

■実際のスパイ養成で使用される演習

 モスクワ大学で心理学を研究するA・N・シモノフは、プーチンも在籍した東西冷戦時代最強の情報機関KGB(ソ連国家保安委員会)にスカウトされ防諜活動に従事することになった…。

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 そこから始まるストーリーをなぞりながら、「記憶力を鍛え、思考を研ぎ澄ます」ためのレッスンを積むことができる本書。その演習は、ロシアで一流の諜報部員の養成に長年使用されているものだ。

■「憶える」ではなく「必要なときに記憶を呼び出す」

 本書はプロローグと第1~7章から構成されており、段階を踏んで少しずつトレーニングの難易度が上がっていく。最初の演習では、記憶というものを正しく認識するための前提知識が語られている。

 伝説的な芸術家やチェス棋士といった人物には、並外れた記憶力にまつわるエピソードが数多く存在する。しかし本書によると、これは一部の天才だけが持っている能力ではないそうだ。記憶力を高めるために意識すべき重要なポイントは以下の2つだ。

1.人間の記憶力で主に問題となるのは、情報を記憶できるかどうかではなく、記憶した情報を「必要なときに呼び出して再現できるかどうか。記憶力がよくなる素質は誰にでもあり、さまざまなテクニックを習得すれば開花させることができる。

2.人間の脳は視覚的イメージの記憶が得意である。そのため記憶術のほとんどは、抽象的な言語情報や数値情報を想像力によって「視覚的イメージに変換する」という手法を用いている。

■嘘発見器を欺くことは可能

 本書の演習は飛ばすことなく、ひとつずつ確実にできるようになってから進めていくのが好ましい。しかしここでその全てを紹介するわけにはいかないので、上級者向けとなる最終の第7章ではどんな演習が行われているのかを少しだけ覗いてみたい。

 第7章までくると「記憶」の扱い方もかなり高度なものになり、自分や他人の記憶を意図的に塗り替えることや、塗り替えられてしまった他人の記憶から正しい情報を導き出す方法など、かなりスパイ色の強い内容となっている。

 特に興味深いのが、スパイの任務中に捕まり「ポリグラフ(嘘発見器)」に被験者としてかけられてしまった場合にも嘘を守り抜くという技術だ。

 ポリグラフは、脈拍、血圧、呼吸、皮膚電気反応、筋肉の緊張、手足の震えなど、人間の生理的状態を測定して記録する装置だ。被験者が嘘をつくときに心の中で生じる葛藤や不安から生理反応が起こり、それをもとに嘘を判別する仕組みだ。

 本書のこのレッスンでは、自分の隠したい行為を自分の中で正当化して脳に刷り込ませ、最終的に自分が嘘を言っても「自分の言っていることは真実である」と堂々と思える状態を目指す。映画の世界のことのように思えるが、かなりの訓練を積めば可能なのだという。

 筆者はもういい歳の男だが、幾つになっても自分の中に残る少年の心がスパイという3文字にときめいてしまう。特殊な訓練により自分の脳を開発し、常人離れした業をやってのける。なんともカッコいい…。

 また本書の演習で習得できるスキルは(たとえスパイにはなれなくとも)、実に幅広い場面で応用が可能だとも感じる。日頃の些細なコミュニケーションから仕事や家事まで、スパイ式記憶術で新しい世界を開拓してみてはいかがだろうか。

文=K(稲)