奈良時代もナンパ、合コン、マウンティング!? 「日本一可愛い万葉集」でわかる意外と「純じゃない」万葉集

文芸・カルチャー

2019/4/28

『よみたい万葉集』(まつしたゆうり、松岡文、森花絵:著 、村田右富実 :監修、阪上望 :助手/西日本出版社)

 新元号「令和」の基となったことで話題の万葉集。ちょっとしたブームが到来しているが、これがどうも小難しそう。

 例えば「令和」で話題になった「梅花の歌」も

「時に、初春の令月(れいげつ)にして、気淑く(きよく)風和ぎ(かぜやわらぎ)、
梅は鏡前の粉(こ)を披き(ひらき)、蘭は珮後(はいご)の香を薫す(かおらす)」

 と、なかなかの難易度。「学生時代、古典苦手だったんだよなぁ…」と、この2行を見ただけで挫折決定する人がほとんどではないかと思う。

 そんな古典恐怖症の人でも「これなら大丈夫!」とオススメできる本がある。それが『よみたい万葉集』(まつしたゆうり、松岡文、森花絵:著 、村田右富実 :監修、阪上望 :助手/西日本出版社)。本の中では万葉集の研究をしている「鹿先生」と生徒の「鳥子ちゃん」が掛け合いをしながら万葉集を解説し、ふんわりしたタッチのイラストが全ページフルカラーで添えられた万葉集ガイド本。デザイン・文章・世界観共に「日本一可愛い万葉集」と言える1冊。監修は万葉集研究者の関西大学教授・村田右富実氏なので「正確さ」もお墨付きだ。

 ただし! 「日本一可愛い万葉集」でありながら可愛いだけじゃないのがこの本のいいところ。内容は美しさや奥ゆかしい歌の紹介だけでなく、色や毒などの「生々しさ」も含んでいる。

 例えば、およそ7割が恋の歌である万葉集の中でも、特に毒を放っているこの歌がチョイスされ、紹介されている。

「うまし物 いづく飽かじを 
坂門(さかと)らが 角のふくれに しぐひあひにけむ」

 この意味は、「素敵な物は誰だって飽きないでしょうに。坂門娘子はなぜブサイクな角さんなんかとくっついたのかしら」と、身分が低く顔の良くない男性と恋仲になった坂門娘子をどストレートにマウンティングしたもの。

「万葉集って、花のにほいがうんたらとかしのばせる恋心がなんちゃらとかそういうやつじゃなかったの!?」とショックを受けさせてくれる。

 万葉集に収録されたが為に、「ただの悪口」が1300年も残ることになるとは、歌った本人はまったく予想できなかったはず。これもある意味ひとつの歴史のロマン…なのかもしれない。万葉集の恋の歌は、ナンパも不倫もあり。純粋なものばかりじゃないのもおもしろい。

 また、本書ではひとつの歌を掘り下げるだけでなく、「万葉新聞」なる学級新聞のようなフォーマットで、男と女の悪意のある句を集めた「悪い男と女の歌特集」や、「歌垣」と呼ばれる合コンを楽しんでいたことがわかるニュースコーナー、さらには、ほのぼのタッチの絵で当時の「夜這い」について細かに書いていたり、まるで万葉集を女性誌にしたような構成となっており、まさに雑誌をめくるように、興味を惹かれた部分だけ飛ばし飛ばしで読んでも十分に楽しめる。勉強するという意識ゼロのまま、いつの間にか万葉集の知識と当時の歴史が身に付いている、というお得な1冊と言えるだろう。

 一風変わった切り口やデザインで、話題の万葉集を楽しむことができる本書。気になるけれど、なかなか手を出せていなかった人も、本書ならすんなり読めてしまうかも。

文=おへそ半島