【GWの散策にも】東京は実は城だらけ! 女子高生コンビが「散策にピッタリ」の城址を巡る

マンガ

更新日:2019/5/11

『東京城址女子高生』(山田果苗/KADOKAWA)

 女子高校生2人組が、意外と知られていない東京の城あとを巡る物語、それが『東京城址女子高生』(山田果苗/KADOKAWA)だ。

 本稿でこのマンガをレビューする私は、10年以上前に旅行で地方の城をよく巡っていた。だからこそ本書に興味を持ったのだが、読んでみると期待していた以上に強く共感した。

 私は城好きの友人に連れられて行くうちに城が好きになったのだが、これは本編主人公・広瀬あゆりと同じ境遇なのだ。皆さんも、本稿をきっかけに本書を手にとり、もし城址(じょうし)へ行ってみたくなったら、こんなうれしいことはない。

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■白黒の“間”にあるロマン! それが城址

 城址とは、お城がかつてあったとされる場所のことだ。天守閣などの建物などはなく、石垣だけだったり、昔は積んであったはずの石がぽつんと残されていたりするだけのこともある。さらに、城があったかなかったかすらも分からないという「推定地」の場合もある。そして、城であったことを示す碑や立て札すらない所もあるのだ。

「ここに昔お城があって
そして滅び
残るはわずかな遺構のみ
栄枯盛衰を感じられて楽しいでしょ?」

 こう言うのは、城址を巡るのが趣味の持田美音(みおん)。主人公のあゆりは彼女とひょんなことから出会い、「レッツ登城!」とウキウキしながら城址を訪れる美音に強引に連れ回されるようになる。そして、いつしかあゆりも城址の魅力にハマっていく――。

 あゆりは家族も含めてちょっと短気で怒りっぽく、豪気な性格。そんなあゆりと、天然っぽい(でも実は計算高い)城好き女子の美音が、漫才のようなセリフの掛け合いをしながら東京を歩き回る。

 性格上、物事の“白黒”をはっきりつけないと気が済まなかったあゆりは、存在もあやふやな城址を巡ることに最初は戸惑う。だが何気なくある巨石(の一部)や神社仏閣などが城の名残だと知り、徐々に城址に興味を持つようになる。

「石垣が残ってるだけですごいと思うようになっちゃったわ…!」

 この“白と黒の間にあるロマン”を女子高生たちが教えてくれるのだ。

 本書に登場する城址の場所もイラストで紹介されているので、実際に訪ねることもできるだろう。笑いながら読めて、しかも情報量も多い高密度な作品なのだ。

■レッツ登城! 城址を訪ねれば城の魅力を語りたくなる

 意気投合した2人は、「城址散策部」を立ち上げる。しかも最初は連れ回されていたはずのあゆりが主導して、である。あゆりは自分の地元、杉並区にも成宗城という城があったことを知り、テンションが上がる。

「でも成宗城なんもないじゃん! 言ってかなきゃダメじゃん」
「伝えてかないとさ いつか本当に埋もれてしまうかもしれないでしょ」

 あゆりは城があったこと、城址のことをみんなに知ってもらいたくなった。好きなものを語らずにはいられなくなった少女は、新しいステージへ上がったのかもしれない。

 今年3月に発売された2巻では、部の立ち上げが描かれ、城址散策を好きになる新キャラたちも登場する。そしてついに天守のある城にも足を延ばすのだが――。

 盛り上がりをみせる本書を片手に、この連休は城址を巡ってみるのもよさそうだ。100以上も城があったとされる東京には、本書ではまだ取り上げられていない城址も数多くある。今は散策にはもってこいの季節、皆さんも「レッツ登城」してみてはどうだろうか。

文=古林恭