読書が苦手な人でも読みやすい!物語を通しておもてなしの心あふれる接客方法を学べる

ビジネス

公開日:2019/5/8

『ホスピタリティを育てる物語 「感動の接客」ができるようになる14の力』(久保亮吾/翔泳社)

 サービス業や接客業に携わる人であれば一度は聞いたことがあるであろう単語、「ホスピタリティ」。「おもてなし」を意味する言葉だ。

 顧客は、商品やサービスだけでその企業の善し悪しを決めているわけではない。それらを提供する従業員の接客態度も企業の印象を決める大きな要因となる。企業側にとっても接客の仕方は他企業との差別化ポイントになっており、社員研修に力を入れているところも多い。接客への関心は、近年ますます高まっているといえるだろう。そんな接客技術を、物語を読むだけで簡単に学べるのが『ホスピタリティを育てる物語 「感動の接客」ができるようになる14の力』(久保亮吾/翔泳社)だ。

 物語はレストランの新米マネージャー・町田のもとに新人スタッフの寺さんがやって来るところから始まる。寺さんが自分より10歳以上年上のおじさんであることに驚く町田だったが、彼は接客のプロだった。子ども連れのお母さん、ピリピリした雰囲気のサラリーマンなど、あらゆるお客様を満足させる寺さんの接客から、町田たちはホスピタリティを学び成長していく。

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 著者の久保亮吾氏は、ホテル業界の専門人財コンサルティング会社である、株式会社リクラボの代表取締役。日本ホスピタリティ推進協会の特任講師も務めている人物だ(本書著者紹介より)。

 ホスピタリティや接客技術について書かれた本はたくさんあるが、本書はほかの本とは異なり、読者が読みやすく、理解しやすいようにたくさんの工夫がなされているのが特徴だ。本書がストーリー仕立てになっているのもそのひとつ。一般的なビジネス本は著者の主張を読み進めるものが多く、途中で読むのが嫌になってしまうという人もいるだろう。その点、本書は町田たちと一緒に接客のポイントを学べるようになっている。物語の中で彼らが成長していく姿は、接客技術が上達していく自分自身のイメージと重なるのではないだろうか。普通の小説と同じように、登場人物に感情移入しながら読めるので、途中で飽きることは少ないはずだ。

 こうしてストーリー仕立てになっていると聞くと、最初から順番に読まなければならず、かえって面倒だと感じる人もいるだろう。確かに、町田たちの物語を理解するためには最初から順番に読んだほうが良い。しかし本書は、途中から読んでもきちんと内容を理解できる仕組みになっている。町田たちの物語は、見開きごとに区切られており、それぞれに内容を簡潔に表す見出しがつけられている。目次で見出しの一覧を確認できるので、読みたい箇所を探し、そこだけ読むことも可能だ。さらに、それぞれの見開きは右のページが文章、左のページがイラストという構成になっているため、文字ばかりだと読む気がしないという人でも読みやすいだろう。

 さらに、物語を通して、ホスピタリティを発揮するべき具体的な場面を挙げているところも本書の良さだ。物語の中で起こる出来事は、実際の飲食店でも起こりうるものばかり。例えば、飲み物のおかわりが必要か尋ねるタイミングがわからない、マニュアルではNGなオーダーをされたが希望を叶えてあげたい、などなど。本書ではこれらの問題への対処方法、その際に気をつけるべきポイントなどの実用的な内容から、「笑顔の力」「記憶の力」といった、ホスピタリティを発揮するために必要な14の力が学べるようになっている。

 最後の解説において久保亮吾氏は、顧客だけでなく、社員や従業員に対してホスピタリティを注ぐことの重要さを述べている。実際に接客を行う店舗スタッフはもちろん、自社のホスピタリティを高めたいと思っている経営者にもぜひ読んでほしい1冊だ。

文=かなづち