堂々と会社を休む「練習」をしよう! スムーズに有休を取るポイントは?

ビジネス

公開日:2019/5/10

『頑張りすぎるあなたのための会社を休む練習』(志村和久/イースト・プレス)

 厚生労働省の「平成30年就労条件総合調査」によれば、日本人の正社員の1年間の有給休暇の付与日数の平均は18.2日。そのうち実際に取得された日数は約半数の平均9.3日といいます。こうした実態を踏まえ、「働き方改革関連法案」によって4月1日から年5日の有給休暇の“義務化”が始まりました。それでも、職場の空気を気にして会社を休めない…という声も少なくありません。

『頑張りすぎるあなたのための会社を休む練習』(志村和久/イースト・プレス)は、病気や過労、育児、あるいはプライベートな事情で仕事を休むことに抵抗感を抱く日本人特有の勤労意識を見直し、よりよい働き方を提案する1冊。

 顧客や会社のために身を粉にして働くことが美徳とされる日本の労働社会。それは本当にあなたの人生を幸福にするのでしょうか。

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■会社を休めない理由は「あなたの中」にあるかもしれない

 例えば、朝起きたら身体が辛い。しかたなく休む連絡をするため電話を手に取るけれども、職場の上司や同僚の顔が浮かんで後ろめたさを感じてしまう。このような覚えは誰しもあるかと思います。本書は、その正体を“日常の業務を通じて刷り込まれた恐怖心や罪悪感”であるといいます。

 同僚が休んだときの上司の不機嫌な顔、休んだ分の作業が割り振られた理不尽への苛立ち、そうした記憶が潜在意識に残り、復帰後の悪影響を想像して無意識にブレーキをかけてしまうのです。

 また、人によっては仕事に対するプライドや責任感、あるいは「評価が悪くなり出世や給与に響いてしまう」という不安かもしれません。いずれにしても、まずは休むことに対する自分自身の“心理的ブロック”をつきとめることが肝心といいます。

 その上で、体調やそのときの事情よりも仕事を優先する必要はあるのかどうかを考えてみましょう。上司や同僚は、どんなに親しくしていたとしても仕事上の関係です。しかし、あなたの身体やあなたの家族とは一生付き合っていかねばなりません。もしあなたが倒れても、職場の誰かが代わりに仕事をしてくれますが、子供の世話や食事の用意までしてくれるわけではありません。

 本来、優先順位が高いのは自分と家族のこと。仕事や同僚のことは二の次だと考えてもよいのではないでしょうか?

■会社ルールがおかしいケースも。きちんと見直してみよう

 そして、会社のルールが必ずしも正しいとは限りません。

「うちの会社では有給休暇はありません」
「繁忙期に有給休暇は認めません」
「決められた理由でなければ認めません」
「休みが多い人は減給します」
「パート、アルバイトに有給休暇はありません」

 こんなルールを聞いたことはありませんか? こういったことが社内独自のルールで決められていたとしても、これらはすべて労働基準法違反になります。

 さらに労働契約法第5条には、企業の安全配慮義務が定められています。これは労働者の心身の健康と職場の安全を管理して事故や病気を未然に防ぐ義務で、長時間労働による過労は、この安全配慮義務違反に繋がります。

 信じられない(あるいは信じたくない)ことですが、企業経営者が労働基準法について知らない、また知っていても守らない違法行為が後を絶たないといいます。会社のルールを強制させられて有給休暇が取得できないという方は、労働基準監督署、都道府県の労働局の相談窓口、個人加入できる労働組合に相談して欲しいと、本書ではさまざまな労働相談機関へのホットラインが一覧にまとめられています。

 人手不足が騒がれる昨今、企業は数少ない社員をできる限りめいっぱい使いたいと思っているかもしれません。上司に業務スケジュールは任せっきり、有給休暇も周囲の言いなりでは、将来、自分や家族の大切な人生を失ってしまうかもしれません。きちんと会社を休む練習をあなたも始めてみませんか?

文=愛咲優詩