『ウルトラマン』で知られる円谷プロの隠れた名作『怪奇大作戦』は、どのようにして生まれたか──

エンタメ

2019/5/12

『「怪奇大作戦」の挑戦』(白石雅彦/双葉社)

 4月よりNetflixで配信が始まったアニメ『ULTRAMAN』や7月からスタートする新作『ウルトラマンタイガ』など、令和になっても昭和のヒーロー「ウルトラマン」は健在である。そのヒーローを生み出したのは「円谷プロダクション」(以下「円谷プロ」)であり、他に『ミラーマン』など巨大ヒーローものがよく知られているのだが、実はそれ以外にも名作と呼ばれる作品はある。2018年に50周年を迎えた『怪奇大作戦』もそのひとつだ。

『怪奇大作戦』は「円谷プロの最高傑作」と評する向きもあるほどの作品だが、おそらくその名を聞いたことのある人はさほど多くあるまい。それはなぜなのか。『「怪奇大作戦」の挑戦』(白石雅彦/双葉社)ではその理由を含めた、当時の制作事情が詳細に語られている。

 まず前提として知っておくべきは「第一次怪獣ブーム」の存在だ。1966年に「タケダアワー」枠でテレビ放送された『ウルトラQ』という作品でブームに火がつき、続く『ウルトラマン』でさらに盛り上がることになる。怪獣を扱った特撮やアニメが次々と制作され、まさに世の中は「怪獣」一色だったのだ。しかしひとつのブームは永遠には続かないものであり、円谷プロとしても新たな「ブーム」を作り出さなければならなかった。それが「怪奇ブーム」だったのだ。当時は水木しげる氏や楳図かずお氏のホラー系漫画が人気であり、ブームの萌芽を感じた円谷プロは「ホラーX」という企画を打ち出している。しかしその時点では時期尚早だったのか、企画は実現しなかった。

 そして1967年末頃は「第一次怪獣ブーム」も終息の兆しが見え、さらに特撮に金がかかる「赤字体質」の円谷プロは経営難の苦境にあった。その局面打開を期待されたのが『マイティジャック』という作品だったが、大人向けの人間ドラマを中心とした物語は特撮シーンと馴染まず、視聴率的には惨敗。『ウルトラセブン』の視聴率も下落している状況の中で、その後番組として企画されたのが『怪奇大作戦』だったのである。

 折しも世間では『ゲゲゲの鬼太郎』などの「妖怪ブーム」に沸いていた時期でもあり、これも番組制作の後押しとなった。科学の力を悪用する犯罪者たちと戦う「SRI」というチームの活躍を描いた『怪奇大作戦』は、いわゆる「怪獣」のようなものは一切出てこない。そしてエピソードには多くの場合、社会問題などを扱った「テーマ」が存在した。孤独な老人の屈折した心情を描いた「青い血の女」や理由なき無差別殺人がテーマの「かまいたち」、そして失われゆく古都を守ろうとする女の情念が悲しい「京都買います」など、現代でも十分に通用する骨太の物語が並ぶ。本作が今日でも「名作」と評される所以だが、それでも当時の評価は芳しくなかった。全26話の平均視聴率は22.0%。現代感覚では決して低くないが、当時は『ウルトラマン』が36.7%を記録するなど、この数字はスポンサーを満足させるものではなかった。結局『ウルトラQ』から始まった「タケダアワー」の円谷プロ担当枠は、『怪奇大作戦』をもって終了となったのである。

 当時はマイナー作の扱いだった『怪奇大作戦』だが、その完成度の高さから徐々に評価を高め、後に『怪奇大作戦 セカンドファイル』などの続編も制作された。しかしそれはいずれも短い話数であり、テレビシリーズと呼ぶには少々寂しい。現在は視聴層も高齢化し、大人のドラマが描きやすくなったと思われるので、ぜひとも新たな『怪奇』のシリーズを2クール以上で楽しみたいものである。

文=木谷誠