あのかぐや姫が、実は男だった!? 呪いを解くべく五つの宝を探す“彼”と一緒に、元奴隷の侍女が奮闘!

マンガ・アニメ

2019/5/20

『かぐや姫のかくしごと』(楠木 薫/白泉社)

 おとぎ話や歴史に登場するあの人の性別が実は逆だったら――? というマンガや小説はときどきあるが、まさか絶世の美女とされるあの人に目をつけるとは…と新鮮な気持ちで読んだマンガ『かぐや姫のかくしごと』(楠木 薫/白泉社)。天上で犯した罪を贖うべく地上に堕とされた悲劇の、そして謎多き姫。月の光を浴びた夜だけ元の男の姿に戻るかぐやと、その秘密を知ってしまった元奴隷・ツバキが、孤独を埋めあいながら5つの宝を探す平安ファンタジーだ。

 仏の御石の鉢、蓬莱の玉の枝、火鼠の皮衣に、龍の頸の玉、そして燕の子安貝。求婚の条件としてかぐやが求める5つの宝は、もとは天上にありしもの。それらを紛失した罪で呪いをかけられ、地上に追いやられてしまったかぐやの秘密は、一部の側近を除いて誰も知らない。幼いころ売られた商人のもとから必死で逃げ出してきたツバキは、屋敷に逃げ込んでうっかりかぐやの変身を目撃してしまい、安全を保証されるかわりに侍女として仕えることに。このツバキが、意外とデキる子なのだ。

 6歳のころからコキ使われるかわりに、高級品を毎日目にして磨かれた審美眼は、持ち込まれる5つの宝の真偽を見抜く。誰ひとり味方がいないどころか暴力をふるわれる日々で培われた生き抜く強さで、宝探しにともなう危険も乗り越える。誰にも媚びることなく、自力で人生を切り開こうとするツバキの姿勢は、本当はありもしない罪を押しつけられて呪いを受けたかぐやの心を癒していく。そしてツバキもまた、ひとりで戦ってきたかぐやの孤独を知ることで、生まれて初めて、誰かに強いられることなく「役に立ちたい」という想いを芽生えさせていくのである。

 主君と侍女は、身分の上で対等ではない。それでも心を対等に通わせられるとしたら、そこに信頼関係があるときだ。最初は利害関係のみで繋がっていた2人だが、かぐやは、身を挺して自分を守ろうとしてくれるツバキを見て、ツバキは自分を味方として頼りにしてくれるかぐやを見て、少しずつ確かな絆を育んでいく。月明かりに照らされるように、2人の心に光が射していくその過程は、読んでいて心地よい。

 そしてまさかの「帝」登場で、恋の気配も漂いだす。チャラいのに頭がキレて、したたかなのがかっこいい帝は、ライバルとして申し分なし。しかも5つの宝を手に入れればいつか天上へと帰ってしまうかぐやに対して、帝は地上でのハイスペックイケメン。今はまだ芽吹きはじめたかどうかの恋心だが、今後どんな三角関係を展開してくれるか、楽しみである。

文=立花もも