「私はあんたの妻!」10年前に他界した妻が小学生に転生? 『妻、小学生になる。』
更新日:2019/6/13
「私は貴恵! あんたの妻!」10年前に妻と死別した夫の前に、小学生が訪ねてきた…。
この超・年の差純愛マンガ『妻、小学生になる。』(村田椰融/芳文社)は、“最強の愛妻家”と“小学生のアラフォー妻”の再び動き始めた奇跡の時間が描かれる。
■下手すれば警察事案! 家族はこっそり奇跡をかみしめる!
妻を亡くした瞬間から、新島圭介と娘の麻衣は、10年間ずっと無気力と失意の中にいた。そんなある日、小学生の女の子が自宅にやってくる。
冒頭のように、少女は自分が他界した妻、貴恵だと告げる。転生して10歳の今、記憶がよみがえったのだと言うのだ。
にわかには信じられない圭介と麻衣。だがその小学生は夫婦しか知らない情報を語り、独特の口調や雰囲気を漂わせる。
2人は彼女が確かにアラフォーの貴恵だと確信、再会を喜ぶのだった。
周りに気をつかいながらも、貴恵は弁当をつくって届けてくれる。また家族で買い物や映画に出かけるようにもなる。
時には他人である中年男性と小学生女子のデートという“事案”になりそうな状況にもなる。
ロリコン変態男に思われないよう注意しつつも、貴恵への愛を隠そうともしない圭介。それを早口でまくしたてて咎める貴恵。そんなやりとりを笑顔で見つめる麻衣。
思わずクスっとしてしまう家族の幸せがそこにはある。
だが本作は決して“転生してきてめでたしめでたし”な、単純なストーリーではない。
■涙腺完全崩壊! この幸せはいつまで…?
家族は10年ぶりの団らんを楽しみつつも、ただ手放しで喜んではいない。
貴恵は「人生は何が起こるかわからない」「私がいなくても進める姿勢と未来がみたい」と言う。
圭介もまた「都合が良すぎる奇跡、シャボン玉のようにふっと消えてなかったことになってしまいそうで」と口にする。
結末はもちろんわからない。でも今生の別れを経験した2人は、ただただ今をせいいっぱい楽しもうとしているようにも読める。
笑えて、そして泣ける一歩手前のシリアスなストーリーなのだ。
ちなみに妻帯者である本稿のライターは、本書を何度か読み返すうちに、複数回泣いたことを告白したい。
奥さんが死んで10年も無気力状態? 社会生活送っていてそれはないんじゃ? 子供もいるのに? そういう意見もあるだろう。
だが“欠けた部分に向き合う”ことは簡単ではないと思う。圭介と同じく「あとは余生」と考えてもおかしくはない。
他界したパートナーが転生し、また出会う、もしそんな奇跡が起こったら…。
ここではネタバレになるのでもちろん書かない。だがおそらく圭介と似た考えになって、同じようにふるまうだろうなあと想像し、少し泣いた。
貴恵さん、確かにスカスカな生活をしていた、あなたにとっての前世の夫はだらしないかもしれない、でも、彼には奥さんが全てだったんだよ…。本当に愛情が深かったんだ…。
読みながらこんな風にしみじみと思い、気がつくと涙腺が崩壊してしまった。(一応書くがライターの細君は健在です)
■展開は風雲急を告げる! 究極の純愛はどうなる?
描き下ろしマンガ「在りし日の貴恵と圭介」も収録された単行本1巻には、圭介に想いを寄せる同僚や、圭介と貴恵の仲を疑うキャラクターも登場。さらに物語は風雲急を告げる不穏な展開に…。
真面目だけどどこか抜けている超愛妻家と、ツンデレ幼な妻の究極の純愛を、皆さんにもぜひ見守ってもらいたい。
文=古林恭