「空気が読める」のは日本人だけじゃない? 国・地域の文化の違いをマッピングしてみた

ビジネス

2019/5/23

『異文化理解力』(エリン・メイヤー:著、田岡恵:監訳、樋口武志:訳/英治出版)

 外国の人や文化に触れることは、ひと昔前と比べるとぐっと身近なものになった。旅行や仕事で外国に行くこともあるし、インターネットでリアルタイムの情報を得ることもできる。さまざまな目的で来日する外国人も増えたし、外国人が同じ職場で働く機会も増えている。私たちがどこにいようと、異文化に触れる機会は格段に増えているのだ。

『異文化理解力』(エリン・メイヤー:著、田岡恵:監訳、樋口武志:訳/英治出版)の著者は、世界中のエリートたちが集まるビジネススクール、INSEAD(インシアード)で教鞭をとる、組織行動学の専門家。本書は、著者が数千人もの経営幹部にインタビューし研究を重ねて開発した、異文化理解のための指標「カルチャー・マップ」について、豊富な具体的事例とともに紹介する文化理解のヒント満載の1冊である。

「カルチャー・マップ」は、【コミュニケーション】や【決断】など、8つのジャンルにおいて、世界各国の文化がそれぞれどのあたりに位置するかが示される。本稿では、そのいくつかを紹介していきたい。

■【コミュニケーション】ローコンテクスト 対 ハイコンテクスト

「コンテクスト(文脈・背景)」とは、話し手と聞き手の間の「共通点」や「暗黙の了解」を指す。「ロー(低い)コンテクスト」の文化圏では、良いコミュニケーションとは明確でシンプルであり、メッセージは額面通り伝えられてその通りに受け取られることが多い。このジャンルのカルチャー・マップでは、アメリカやオランダなどが最もローコンテクスト寄りとされる。

 それに対して「ハイ(高い)コンテクスト」であるとされる文化圏では、良いコミュニケーションとは繊細で含みがあるものとされ、メッセージは行間で伝えて行間で受け取られる。いわゆる「行間を読む」「空気を読む」というスタイルだ。想像の通り日本、そしてインドネシアも最もハイコンテクスト寄りに位置付けられている。

■【決断】合意志向 対 トップダウン式

 グループ内で何かの意思決定が行われる際に、それがグループ全員の合意に基づき行われる場合が「合意志向」とされ、それに対して上位者が行う場合は「トップダウン式」とされている。スウェーデンが「合意志向」寄りなのに対し、中国は最も「トップダウン式」とされている。

■【スケジューリング】直線的 対 柔軟

 プロジェクトなどをあらかじめ立てたスケジュール通りに進めることが重要視されるのが「直線的」タイプ。それに対して、スケジュール通りに進める事よりも、何かあった際の柔軟な対応が重要視されるのが「柔軟」タイプである。ドイツやスイスが最も「直線的」寄りとされ、インドやナイジェリアが最も「柔軟」寄りとされている。

■文化の見取り図=カルチャー・マップを読むと見えてくるのは…

 上記をはじめ、本書では【コミュニケーション】【評価】【説得】【リード】【決断】【信頼】【見解の相違】【スケジューリング】という8分野のカルチャー・マップが示されている。外国人とコミュニケーションをとる時に、相手がマップ上の“どこ”に位置しているのかを頭に入れた上で対応を準備しておけば、いらぬ誤解や行き違いなどが防げるだろう。また、万が一何か起きた時にも、相手の「背景」を想像することができれば、動揺することなくトラブルを最小限にとどめられるのは確実だ。

 本書や本書が提案するカルチャー・マップは、「●●人は△△だ」と乱暴に決めつけたり、差別をしたりするものではない。日本人ひとつとってみても、もちろん地域性や個人差だってある。また、人によっては、自身の経験から「私が知っている●●人はこんなものではない」とか「私は海外経験豊富だから、書物やデータの知識は必要ない」と感じるかもしれないが、そういう人にこそ、ぜひ本書を手に取っていただければと願う。「育ってきた国・地域の文化が、その人のものの見方や考え方に深い影響を与えている」ことがとても注意深く説かれた上で、そこからくるものの見方の違いが、カルチャー・マップでわかりやすく可視化されているのだ。

 コミュニケーションをとる際に、相手のことを理解するのは「基本のキ」だ。本書を読んで対応力を身に付け、コミュニケーションを深めながら確かな信頼を築いていこう。

文=水野さちえ