「エロい研究がしたい!!」モテない理系大学生が、イグ・ノーベル賞に挑んだら……

マンガ

公開日:2019/5/25

『いぐのべる ブラジャーはガスマスクになるんですか?』(biki:原作、高田桂:漫画/講談社)

 毎年10月に発表される「ノーベル賞」。ダイナマイトを発明したアルフレッド・ノーベル氏の「基金を設立して人類に貢献した人物に、賞を分配してほしい」という遺言のもとに創設された、地球一名誉ある賞だ。2018年には、京都大学特別教授の本庶佑氏がノーベル医学生理学賞を受賞し、大きな話題となった。

 そんなノーベル賞のパロディとして誕生した「イグ・ノーベル賞」をご存じだろうか。イグ・ノーベル賞は「人々を笑わせ、そして考えさせてくれる研究」に贈られる、地球一不名誉な賞だ。先日、第1巻が発売された『いぐのべる ブラジャーはガスマスクになるんですか?』(biki:原作、高田桂:漫画/講談社)は、アホでモテない理系学生たちが「イグ・ノーベル賞」の受賞を目指して奔走する物語だ。

 舞台は、西の名門「京都大学」から、東へ2キロ先に位置する京都“中央”大学の理工学部生命科学科・神経心理学研究室(通称:松竹研)。主人公の京都中央大学4回生・猪瀬双六が、松竹研の松竹教授の家に伝わる1億2千万円の壺に「自分の尿」を入れて走り出し、転んで壺を割ってしまったことがすべてのはじまり……。

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 と、この時点で「?」が浮かぶかもしれない。少し詳しく説明すると、主人公の双六は“アスパラガスを食べてクサくなった(かもしれない)自分の尿のニオイ”を研究室のみんなに嗅いでもらおうと考えたのだ。正直、ここでわかるのは双六が類まれなるアホだということのみ。

 そんな「筋金入りのアホ」である彼なら、イグ・ノーベル賞を受賞できるのでは、と考えた松竹教授の策略に引っ掛かり、壺を弁償する代わりにイグ・ノーベル賞を受賞することを命じられる。

 双六は、一晩中イグ・ノーベル賞について調べ、受賞者たちが「純粋な好奇心に身を任せて探求しているだけ」だと気づいた彼は、いたく感銘を受けた。そして彼は、とてもまっすぐな瞳でこう言い放つ。

まだ具体的ではありませんが 譲れない方針が見えたんです!
何かとってもエロい研究がしたいんです!!

 かくして、双六をはじめとする個性豊かな松竹研のメンバーは、地球一不名誉な「イグ・ノーベル賞」を目指すことになったのだ。以降、合コンをして「真実の愛」について研究したり「デートの誘い方」を検証したりと、モテとエロの研究にすべてをそそぐことになる。

 また、同作は、親切にも過去に「イグ・ノーベル賞」を受賞した研究が紹介されている。たとえば、作品タイトルは2009年にイグ・ノーベル賞・公衆衛生賞を受賞した研究でもあるという。

【2009年 イグ・ノーベル賞 公衆衛生賞】
ガスマスクに素早く変形させることができるブラジャーを発明した業績
ガスマスクを肌身離さず持ち歩くためにはどうすればいいか?
そんな問いかけの結果、この「エマージェンシー・ブラ」が生まれた。
服を脱がずに取り出せて、危険な化学物質の吸引を防ぐことができる優れもの。(エレナ・ボドナー他)

 このほかにも、いわゆる理系ネタがたくさんちりばめられている。全編通してアホでありながら、人生に関係なさそうな教養も身につけられる『いぐのべる』。日々の勉強に疲れた学生さんにおすすめの作品だ。

文=丸井カナコ