矢沢永吉最後の写真集「俺」。男なら必ずシビれる、孤高のロックンローラーの半世紀

エンタメ

2019/5/25

『俺 矢沢永吉』(矢沢永吉/ぴあ)

 矢沢永吉とは何者か。若い世代では“永ちゃん”について詳しく知らない人も多いのかもしれない。しかし家族・親戚・先輩・上司などを見渡してみると、あなたの周りにも熱狂的なファンがいるのではないだろうか。

 日本のロックンロール文化を築き上げた主要人物のひとりとして、日本中の男を虜にした“男の中の男”として、改めて彼がどんな人物なのかを知りたい。そう思う若い人も多いようだ。

「矢沢永吉最後の写真集」として先日刊行された『俺 矢沢永吉』(矢沢永吉/ぴあ)に目を通すと、矢沢永吉という人物のこれまでの軌跡がうかがえる。そして、彼を彼たらしめるものが何なのかということが一層理解できるはずだ。

 1970年代にロックバンド・キャロルのベースボーカルとしてミュージシャンデビューし、その後長きにわたりソロ活動を続けてきた永ちゃん。自身の熱狂的なファンたちの、さらには日本のロック界の“ボス”として常に己を貫いてきた。

 本書には、彼の半世紀近くにわたる孤高の日々の表と裏を切り抜いた多くの写真が詰め込まれている。それらの写真の間には、各時代に彼が雑誌等に残した言葉も綴られている。

■『成り上がり』から変わらぬもの、変わったもの

 ソロデビュー後の1978年。「時間よとまれ」がミリオンセラーを達成し日本一稼ぐミュージシャンとなった彼は、初の自叙伝『成り上がり』(矢沢永吉/小学館)を出版。たちまち社会現象を巻き起こす。

 そんな名実ともに「てっぺんを取った」年の彼のインタビューと写真も本書には掲載されている。若くして頂点まで成り上がり、その後もずっと上を張り続けてきた彼の精神のルーツをそこに見ることができる。

■40代でたどり着いた、成熟した恋愛観

 30代のダンディーな顎髭姿の写真が続いた後、40代となった年のインタビューでは「矢沢が今思う愛」が語られる。「金がありゃ何だって手に入る」と突っ走っていた20代とは違い、ここでは「愛」「恋」「心」という概念が重要なキーワードとなる。

「愛しい」と思うから人間は優しくなれる。彼がそう語る記事は、偉大なミュージシャンとしてトップに君臨し続けながらも確実に成熟していく永ちゃんの姿を見せてくれる。

■そして今。69歳で現役ということ

 もうすぐ70の扉を開ける永ちゃんは、これまでの約半世紀にわたる“俺”を振り返り、「ひとつだけ変わらないものは、“歌っている俺”」だと語る。69歳にしてなお彼が「おじいちゃん」ではなく「ロックンローラー」であることは、本書の最後の写真を見ても一目瞭然だ。

カネも地位も名誉も手にすることは悪くない。でも、一番ハッピーなのは、俺にはまだやるべきことがあるということ。

 矢沢のロックにゴールはないのだ。これからも走り続ける彼の姿を想像し、ワクワクさせられる読後だった。

 本書は往年のファンはもちろんのこと、リアルタイムの永ちゃんを知らない若い世代にもハマりそうな1冊だと筆者は確信した。

 貧しい生い立ちから実力で成り上がり、その後約半世紀にわたって昭和・平成の日本の音楽界を牽引し続けてきた矢沢永吉という男。時代が変わっても朽ちることのないひとつの伝説を手に取って眺めてみてはいかがだろうか。

文=K(稲)