発売即日で重版!松井玲奈のデビュー作『カモフラージュ』を、読書家たちはどう読んだのか

文芸・カルチャー

公開日:2019/5/25

『カモフラージュ』(松井玲奈/集英社)

 4月5日(金)に発売された、女優・松井玲奈さんによるデビュー短編集『カモフラージュ』(集英社)。発売即日で重版がかかるなど、その反響は凄まじく、映像化を期待する声もあがっている。

 本作は6編の物語を収録した短編集だ。紡がれているのは、叶わぬ恋に苦しむOLを描いたラブストーリーから小学生男子が遭遇する怪異をテーマにしたホラーまで、実にさまざま。すべてが一人称で綴られているが、その語り口に違和感は一切ない。等身大の女性はもちろんのこと、子どもや大人の男性をもリアリティをもって描く松井さんの筆力に脱帽する。

 それぞれの物語に登場する主人公の立場や属性はバラバラだが、唯一共通するのは「食べ物」が印象的なモチーフとして描かれているということ。それらは彼への想いを伝える小道具として登場したり、不気味なストーリーを際だたせるために描かれたり、いずれにしても作品の世界観を確立するために効果的に使われている。「食べる」という行為は「生きること」でもあり、グロテスクな行為でもある。ひとつの行為を多角的に分析し、物語に落とし込む。その観察眼の鋭さは、女優としてさまざまな役柄にチャレンジしてきた松井さんならではのもの、と言えるかもしれない。

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 そんな本作を読んだ読書家たちは、読書メーターに以下の感想を投稿している。

様々なジャンルの食にまつわる短編集。最初のハンドメイドは、なんて幸せな恋愛小説なんだろう。キュンとする、などと思っていたら意表をつかれる。ホラーはぞわぞわとした気持ち悪さ、心の闇の対処法の発想に衝撃を受けた。どの短編もこの物語はどこに向かっていくのだろうと展開が気になり、そして不意打ちに合ってしまう。人は、常に何か我慢し、自分を偽りながら生きている。でも、後悔したり、心がすり減ってしまっても、はけ口を見つけ出したり、気持ちに折り合いをつけることができれば日々進んでいけるのかもしれない。面白かったです!(びびん)

女優松井玲奈、衝撃の小説家デビュー短編集!小説すばるに昨年11月に初掲載された「拭っても、拭っても」という女の絆創膏の違和感から紡がれる物語を読んだ時これは只者じゃないと一読感じ、その後も「ジャム」の僕のお父さんは3人いる―から始まる悪夢的夢想に打ちのめされ、「リアルタイム・インテンション」ではユーチューバー3人の本音闇鍋会に慄然・・・そして「ハンドメイド」(不倫とビー玉)、「いとうちゃん」(太ってしまったメイドの奮闘記)、「完熟」(桃フェチの艶かしさ)の3編を加え堂々の単行本化!是非この才能に触れて!(ジャム)

多様なジャンルの短編集。アイドルとしての松井玲奈はよく知らないんですけど彼女の感性には非常に好感が持てたし、発想のセンスには舌を巻きました。芸能人の書く小説ってどうしても著者の顔がチラついてしまう気がして正直敬遠してたんですけど、全く気にならなかったです。どのお話もしっかりとしたテーマでメッセージ性が強く、考えさせられます。特に『いとうちゃん』は美に対する世間の固定観念に悩む女の子がただそれに倣って終るんでなく、ありのままの姿で生きることを肯定してくれていてとても気持ち良かったです。(倉田)

アイドルだった時代から応援してたこともあり、どんなもんかと読んでみたら度肝を抜かれました。 しかもこれほどジャンルの異なる作品を楽しめる作品集になってるとは予想してませんでした。 特にSKE48の松井玲奈を知ってる人には意外な作品だと思いますが、そうでない人も元アイドルだから、女優だからというのは関係なく読んでほしい一冊です。(らむ)

元アイドルが書いた短編集…なんて風に思って読むと、しっぺ返し喰らいます。 恋愛あり、ホラーあり…バラエティに富んだ物語はどれも、どこか妖しく、闇が見えるような。 正直ちょっと驚きました。こんなん書いて大丈夫なの?って思う部分もあるし。 気になる人は読んだ方がいいと思います。なんだかクセになりそうな感じです。(jun)

 本作の帯には作家・森見登美彦さんや島本理生さんも推薦コメントを寄せている。なかでも森見さんの「信用せざるを得ないのである」というコメントは、新人作家としての松井さんにとって、最高の賛辞ではないだろうか。

 元々の松井さんファン、小説好き、そして作家。大勢の人たちが高評価している本作。ぜひこの機会に、手にとってもらいたい。

文=五十嵐 大

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