種明かしに常に驚く、愉快で骨太な文化系青春×日常ミステリー
公開日:2012/4/21
胸きゅん×ちょいミス、と思いきや、かなりどっしりとした骨太な日常ミステリー「ハルチカ」シリーズ第1弾。
語り手は女子高生(チカ)、探偵役は幼馴染の男の子(ハルタ)とくれば、2人の淡い恋なんてものを予想しますよね。だが違う! チカとハルタは互いに想いあう仲ではなく、恋のライバル同士。キャラクターも個性的でとても楽しい、連作短編ミステリーです。
文化祭準備のさなかに化学室から「消えた劇薬」、弟を失った少女の差し出した「全面白のルービックキューブ」、演劇部との即興劇対決「退出ゲーム」に隠された意図、家族を捨てて放蕩してきた老人の求めていた「幻の色」。1話ずつのモチーフがとても美しくて彩があって、個人的にはとても好きです。
ミステリーといっても、舞台は高校の吹奏楽部。部員集めに奔走する2人がいろいろな謎に巻き込まれていくという形なので、人が死ぬような残虐な事件は起きません。しかし、すべての謎の真相や背景が甘酸っぱいわけでもありません。むしろ取り扱われている題材はかなりヘヴィでシリアス。それをハルタ&チカ以上にとぼけていて変わり者ぞろいの先輩・同級生たちがうまく中和して、救いと笑いを生み出しています。
本作は、1年生を描いた第1作。書籍では4巻が発売されたばかり。わたしもまだ最新刊は読めていませんが、次作『初恋ソムリエ』も思いがけない角度から謎がうまれる傑作なので、ぜひまずは『退出ゲーム』を試してみてください。
冒頭がコレなので、かなりひきつけられます
会話のテンポは軽妙で愉快