これからの時代をサバイブするのは、ビジネスルールを疑う“反逆者”。その5つの特質とは

ビジネス

公開日:2019/5/30

『イヤなやつほど仕事がデキる なぜルールに従わない人が成功するのか』(フランチェスカ・ジーノ:著、櫻井祐子:訳/日本経済新聞出版社)

 日本は今、大きなパラダイムシフトの最中にある。大企業では早期退職者募集の嵐が吹き荒れる一方、年金支給開始年齢は引き上げられる。実質的な副業解禁や新卒一括採用の廃止も、大きなファクターとなるだろう。昭和から平成にかけて築いてきた社会のシステムに、ほころびが見え始めている。

『イヤなやつほど仕事がデキる なぜルールに従わない人が成功するのか』(フランチェスカ・ジーノ:著、櫻井祐子:訳/日本経済新聞出版社)は、そんな私たちに未来へのヒントを与えてくれる本だ。

 著者のジーノ氏はハーバード・ビジネス・スクールで教授を務め、多くの経営者らにコンサルティングを行なっている。本書の指す“イヤなやつ”とは、ビジネスのルールを疑い、枠をはみ出して本質的に物事を捉え、行動する“反逆者”だ。ジーノ氏によれば、彼らには5つの特質がある。

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(1)新奇性

 ファストフードチェーンのパルズ・サドン・サービス社では、社員は出勤するまでその日の業務の順序を知らされない。ともすれば単調にも思える業務に社員が能動的に取り組めるよう、敢えてそうしているのだ。このように会社が仕組みを整えることによって、売上は高くなり、離職率は低くなっている。

(2)好奇心

 インテュイット社は「最優秀失敗賞」を設けて、社員が好奇心を自由に追求するよう促す。好奇心が強く、知っていることよりも知らないことに注目する人は、組織のスター人材になることが多いとのことだ。

(3)客観視

 映画『ハドソン川の奇跡』でも知られるチェズレイ・サレンバーガー機長は、危機的な状況に陥ったとき、自分を客観視し、従来のマニュアルにはない行動をとって乗員乗客全員の命を救った。「先入観にとらわれない心を持ち、一見不可能な状況を新しい視点からとらえ直せば、解決策が浮かぶことがある」とジーノ氏はいう。

(4)多様性

 多様性はノルマではなく、長期的な成長ビジョンなのだ。私たちは同質な人々に囲まれていると安心する本能を持っているが、多様性の高さと成果の高さが相関することはさまざまな研究が示している。

(5)偽りのなさ

 自らのことを率直に打ち明けることが、信頼関係を高めるだけでなく、自尊心や業務遂行能力をも維持する。ウィプロ社では社員研修に多額の費用をかけていたが、離職する社員が後を絶たなかった。しかし研修に自分の独自性や強みを考える時間を設けると、彼らは自分の長所を出せるように仕事のやり方を工夫していた。

 数多の研究に基づいて“イヤなやつ”のススメが説かれる本書。変化を求められる私たちにとって、未来に携えていきたい一冊だ。

文=えんどうこうた