こんな精進料理なら食べてみたい…! 600年にわたって受け継がれてきた「精進料理」

食・料理

2019/6/1

『尼寺三光院の毎日やさい精進料理』(西井香春/主婦の友社)

「精進料理」というと、一般の人にはあまり馴染みがなく、「味気なさそう…」「物足りなく感じそう…」と敬遠してしまいがち。そもそも家庭で作るものではなく、わざわざお寺に行って食べるもの、というイメージがあり、存在自体ハードルが高い。

 しかし近年、健康志向な人が増えており、丁寧な暮らしが見直されている。忙しい毎日の中で少しでも健康に気をつかいたい、と「食」に注目している人も多い。旬の食材を活かし、限られた食材をうまく活用して仕上げる精進料理は、一見遠いところにあるようで、実は今の時代に必要とされているものがたくさん隠されているようにも感じる。

 そんな精進料理を、思わず「わあ…!」と声が漏れるような、味はもちろんのこと視覚的にも楽しめるよう美しく仕上げて評判となっているのが、東京・小金井の尼寺「三光院」。『尼寺三光院の毎日やさい精進料理』(西井香春/主婦の友社)は、この三光院の料理長が四季折々の定番野菜を活かし作っている料理のレシピ本だ。

 本書に出てくる精進料理は、元々天皇家の皇女が住職を務める京都の尼寺に、600年に渡って受け継がれてきた伝統あるレシピ。そこには女性ならではの繊細さや優美さがあり、丁寧な暮らしがしたいと願う多くの人々を虜にしている。

 例えば、これから梅が出回る季節がやってくる。梅というと、梅干しや梅酒、梅ジャムなど保存食にすることを想定した調理が一般的だが、本書ではあく抜きした梅を煮て器に美しく盛り付けた「梅煮」が紹介されている。

 この梅料理が考えられた当時は、三光院の料理はプロではなく尼僧が作っていた。忙しい中で、どうすれば梅を簡単に美味しく食べられるのかと考えた結果、この梅煮が生み出されたのだとか。プロが考えるおもてなしの料理ももちろん魅力的だが、こうした生活の中で考え出された料理には、プロの料理にはない魅力や気遣いがある。

 また、においの強いものを食べられないお寺で許されている数少ない香り高い香味野菜「みょうが」も、これから旬を迎える食材の1つ。三光院にはたくさん自生するそうで、薬味だけでは食べきれずよく天ぷらにする、と書かれている。

 シャキシャキとした食感とスッと鼻を抜ける香りがうれしいみょうがだが、実は栽培しているのは日本だけだそう。本書には、こういった食材にまつわる豆知識がいたるところにちりばめられており、食材のルーツや広まった背景も一緒に知ることができる。

 ほかにも、涼しげな透き通った緑が魅力の「冬瓜のくずとじ」など、「精進料理ってこんなにオシャレなの!?」と目から鱗が落ちそうな料理が多数紹介されている。

 さらに、巻末では、フランス料理の世界にいた著者が精進料理の道を進むことになったきっかけなど、著者の経歴や目指すものについても触れている。

 この『尼寺三光院の毎日やさい精進料理』を読みながら長く受け継がれてきた精進料理の世界を覗いてみると、食材の持つ魅力と向き合い、それを活かすことの楽しさ、贅沢さに惹きつけられる。私も改めて、素材の味と向き合ってみたくなった。

文=きこなび(月乃雫)