モテモテ男子高校生が恋に落ちたのは、超鈍感なブラコン空手女子!『嘘800と好き1つ』が面白い理由

マンガ・アニメ

2019/6/2

『嘘800と好き1つ』(角野ユウ/白泉社)

 王道少女漫画でときめきたい人には、角野ユウが描く『嘘800と好き1つ』(白泉社)をオススメしたい。

 主人公の朔良(さくら)は超絶モテるイケメン男子高校生。同級生の女子はみんな彼に頬を染め、心も身体も許し、友達を下げてでも媚びを売る。

 あまりの「チョロさ」に朔良はウンザリしながら軽くあしらう。「結局女なんて」と腐る彼は、他の女子とは違う「笑える反応してくれそう」な女の子が現れないか、とため息をつく。そんなときだった。

 ジャージを着た同級生の御堂が朔良の足につまずき、そのまま倒れ込んでふたりはキスをしてしまうのだった。どちらが悪いわけでもなく単なる事故だが、顔を真っ赤にしながら必死に謝る御堂に、朔良は吹き出してしまう。彼女のテンパり方は、「ピュアな私」を演じてる他の女の子とは違った。

「まぁこいつもどうせ根本はその辺の女と同じなんだろうけど」と思いながらも「次のオモチャはこいつだ」とロックオンする朔良。自分に惚れさせ、からかって遊んでやろうと計画するのだった。

 しかし、御堂は朔良の予想よりもずっと鈍感で堅物だった。普段だったら大喜びされるであろう彼のアプローチにも御堂はまるで好意を示さない。それどころか「公共の場でそういうことばかり言ってると不誠実な男だと周りから噂されてしまうぞ!?」と本気で心配する始末。おまけに筋金入りのブラコンで、頭の中は兄のことで一杯。一途に頑張る空手すらも、兄に褒められるためにやっている。

 そんな御堂の掴めなさに、朔良はいつの間にかだんだんと興味以上の想いを抱くようになっていた。惚れさせてやると思っていたら、自分が惚れてしまっていたのだ。

 ……なんとも、少女漫画の「王道」をいく作品である。設定だけ聞けば、「どこかで読んだことありそう」と言われてしまうかもしれない。

 しかし、たとえば御堂の人物描写では、その鈍感さに納得感があったり(彼女は自分の兄を慕うあまり空手バカになっていった)、多少は自分の気持ちを自覚して頬を染めたり、どこかリアリティがある。些細な箇所ではあるが、丁寧に描きこまれているからキャラクターも生き生きしていて新鮮だ。

 朔良が御堂に対してあからさまなモテ仕草をしないのも、また可愛らしくていい。手慣れているはずの彼が、御堂の前だと腕を掴むことすらもおおごとなのだ。

「おもしれえ女」という言葉は、どこか御都合主義の少女漫画を揶揄するような表現としても存在してしまっているが、これほど基本に忠実に、キャラクターに愛をもって描かれれば、ストレートにときめきを享受できる素晴らしい物語になる。初々しい2人の姿に胸をきゅーっとさせられながら、やっぱり王道って素晴らしいなあ、と改めて思う作品だった。

文=園田菜々