某大手企業のいわくつき「経理二課」で何が…⁉ 体育会系部下×イケメン上司のリーマンコメディ『ヴァンパイア課長』

マンガ

公開日:2019/6/5

『ヴァンパイア課長』(夏水りつ/白泉社)

 どんな職場にも、ちょっと気になる人はいるものです。隣の席からメールで話しかけてくる新人くんとか、私生活がまったく見えないベテランさんとか、掃除のおじさんのふりをして社内の見回りをする社長とか……でも、さすがにこんなパターンは聞いたことない!

『ヴァンパイア課長』(夏水りつ/白泉社)の主人公・角田が異動になったのは、入った者はみな辞めていくと噂の「経理二課」。窓のない地下一階にあるその部屋は、社内最後の島流し場所だと言われているが、角田は絶対に辞めないと決めていた。というのも角田は、社長の気まぐれで廃部になった実業団、元アイスホッケー部の部員だったのだ。

 それにしても、経理二課の課長は少しばかり……いや、かなりおかしい。青白い肌は極端に紫外線に弱いそうで、日傘に帽子、サングラスの完全防備で出勤する。得体の知れない赤い液体を飲み、体調がすぐれないからと資料室にこもってしまう。にんにくが苦手だというが、食事をしているところは見たことがない。加えて彼の美貌は、まるで伝説上の存在──そう、吸血鬼を彷彿とさせ……?

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 そんな課長が角田に与えた仕事は、日商簿記の勉強だった。元実業団所属の角田は、会社の中では扱いにくい存在だ。だからこそ、社内をたらい回しにされてきた。どうやらここでは、黙って机に向かっていろという新しいタイプのイビリを受けるようだ。そう思いながら耐えていた角田だが、課長からの意味深な視線、触れそうに伸ばされる手、挙げ句の果てにかけられた「君のことは気に入ってる」という言葉に、ついに堪忍袋の緒が切れた。

 ところが、締め上げた課長の手にはトマトジュースの缶、足元には資料室で飼っているらしい仔猫の姿が。角田のことを気にしていたのは、課長の敬愛する福沢諭吉=複式簿記を日本に紹介した人物に似ているからという理由だそう。好きなものは猫と諭吉、傷つきやすく、すぐに資料室のロッカーに立てこもる──課長は、ただの変人だったのか。愕然とする角田。けれど彼は、見てしまった。課長が触れた花瓶の生花が、一瞬にして枯れたのを……!

 はたして課長は、本当に吸血鬼なのか!? 課長のお世話係に任命された角田の運命は!? 曲者ぞろいの経理二課(っていうかこの会社)は、課長や角田の“居場所”となるのか!? 身体も態度もでかい体育会系部下×ミステリアスな美人上司の、シュールでハートフルなリーマンラブコメ。気になった人は今すぐ、某社地下一階の扉のかわりに、本書の表紙を開いてください。ようこそ、奇妙で優しい経理二課へ!

文=三田ゆき