婚活に疲れたなんてわがままやで!「子ども記者」の辛辣な相談回答がクセになる!

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更新日:2019/6/5

『はい!こちら子ども記者相談室デス!』(かめおか子ども新聞/新潮社)

 悩み事の相談は、たいてい年上や先輩にするもの。豊富に積んだ人生経験を頼りに、的確なアドバイスがほしい。できればこちらの考えを肯定してほしい。そんなことを願いながら、おもむろに悩みを切り出す。

 ところが『はい!こちら子ども記者相談室デス!』(かめおか子ども新聞/新潮社)では、大人が子どもに悩みを相談している。なんと大胆な…! しかも回答する子どもたちのアドバイスが…実にこう…切れ味スルドイのだ。

Q.中1の息子に「クソババア」と言われ、ショックです。これからこういうことが増えていくのでしょうか。
A.はい、間違いなく増えます。だってほんまにお母さんは「クソババア」だからです。でも、優しいところもあるから、常日頃は「ババア」で、たまに「クソババア」です。

 思春期の子どもを抱える親ならば卒倒しそうな回答。怒り狂った鬼ババが牙をむきかねない…。

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 本書はこのように、悩み相談に対して子どもが本気で回答するありがたい1冊だ。ストレートで辛辣で、的確だからクセになる。そんな痛快なQ&Aをもう少しだけご紹介したい。

■「婚活に疲れました」←そんなんただのわがままやで!

 続いての相談は、「婚活に疲れました」という一文から始まる30代後半の女性。自分と同じかそれ以上稼いでいて、5歳までの年上はOKで、バツイチ子どもなしまでも大丈夫。容姿は清潔感があればこだわらない。

 このような条件で探しているが、デートはできても「結婚したい!」という男性が現れないそうだ。「そもそもなぜ結婚しなければならないのかも、段々わからなくなってきました」という本音が辛い。

 この相談に対して、子ども記者相談室の回答はどのようなものかというと…。

A.そんなんただのわがままやで!

 とても厳しいご意見を放っている。ビンタを食らったような気分だ。

「全部じゃなくても、3つ以上揃っていたらいいじゃん!うちもお父さんはハゲてて、デブで、もうどうしようもないけど、お母さんは仕方なしに一緒にいるって言うてた! ぜいたく言ったらアカン」

 たしかに恋愛は「好き」が高じて「付き合う」に発展するもの。その感情がないのに「条件ありき」で探しても、なかなか結婚に結びつかないのではないか。どうしても条件を優先したいならば、「ぜいたく言ったらアカン」という言葉を仕方なく飲み込むことも…うーん…あるかもしれない。

 ちなみに本書が終始関西弁なのは、登場する子どもたちが京都府亀岡市に住む「かめおか子ども新聞」の記者だからだ。

■「年上の部下にはどう接する?」←厳しく接するべきです。

 続いては、年上の部下の扱いに困った上司から「どう接するのがよいでしょうか?」という相談が寄せられている。仕事で間違いを指摘すると「そんな指示は受けていない」とむくれてしまうのだとか。「面白くない気持ちも分かるのですが、上司としては困ってしまいます」と切実なコメントを残している。この相談に対する回答がこれだ。

A.年上でも部下なんだし厳しくするべきです。

 やっぱりそうですよねー! ストレートな意見に思わず共感の言葉がもれてしまう。

「年齢とか性別とか国籍とか関係ない時代です。学校でも全く使えない先生はいるし、近所にも名前だけで全く仕事しない○○会長さんが住んでいます。年上でも部下なんだし厳しくするべきです。使えないものは使えない!」

 とてもシンプルな回答に、大人としても「やっぱそうだよな~」という納得感があるのではないか。ときどき子どもは小さいお坊さんのように悟っていて、大人を唸らせる的を射た意見を言う。本書の魅力は、この小さなお坊さんの意見が随所にあふれているところだ。

■「子育てがうまくいかない」←できることしかできひん

 子育てに奮闘する親ならば誰もが頭を抱える悩みがある。最後の相談は、その苦悩が文章から読み取れる。

Q.子育てを頑張っていますが、なかなかうまくいきません。
「いいお母さん」ってどんなお母さんだと思いますか?
「いいお父さん」ってどんなお父さんだと思いますか?

 すべての親がこの問いと向き合いながら子育てをするのではないか。親としてどうあるべきか。どう接したら子どもがまっすぐに成長してくれるか。自問自答を乗りこえて親が親としての自覚を持つ。

 この相談にはこのような回答が寄せられた。

「いいお母さん」
美人、怒らない、料理がうまい、気がきく、やさしい、あまり化粧が濃くない。

「いいお父さん」
定時帰宅、イケメン、金持ち、やさしい、面倒臭がらず遊んでくれる、偉そうじゃない、変な匂いがしない。

 たしかにそうだった…。子どもの頃、自分の両親にはこのようなことを望んでいたな…。幼い記憶がまざまざとよみがえる回答だ。ちなみに本書の挿絵にはこのような一文があった。

「きいたところでなァ、できることしかできひんのになァ」

 どちらかというと、この言葉こそ真実だと感じる。できることを一生懸命やるのが子育てなのかもしれない。

 本書は、大人の切実な悩みに子どもが本気で答える1冊だ。とてもストレートで辛辣だが、子どもならではの的確な意見がいっぱいある。クセになって読み進めてしまうのはきっと、大人同士ではなかなか言えない本音を、代わりにズバッと言ってくれるからだろう。子どもの飾らない言葉が、大人の気持ちを厳しく立ち直らせてくれる。

文=いのうえゆきひろ