気がつけば夢中に夢中。これは、とても、夢のある話なんです

小説・エッセイ

公開日:2012/4/24

パプリカ

ハード : PC/iPhone/Android 発売元 : 新潮社
ジャンル: 購入元:BookLive!
著者名:筒井康隆 価格:724円

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現代はしばしば、科学万能の時代といわれます。
人間は数多くの到底不可能と言われていたことを、10年、20年、100年で次々と看破してきました。平明な例ではありますが、ほんの数十年前、世界中のSF作家たちの誰が、携帯電話を予測できたでしょうか…とはいえ、その万能たる科学にも、まだまだ到達のできぬ領域もあります。

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時間旅行や、空間移動、天国や地獄の観測や、悪魔・天使の類への接触などは、遠い古より切望されながらも、“想像の産物”の域を出ません。

しかし―――。
もし本作の主人公・千葉敦子女史ことパプリカ嬢に同様な話題を持ちかけたなら、答えは必ずしもノーではないでしょう。まったく、なんとも夢のある話じゃありませんか。

本作は他人の夢のなかへ潜入することが出来る機器“DCミニ”を巡る物語であります。
ユングやフロイト博士が聞けば、たちまち狂喜乱舞するような機械ですが、精神病治療への激的な効果の裏で、副作用が暴走。増幅された夢が現実にあふれ出し、跋扈する怪奇極まる夢幻の産物たち。夢と現実が混交した蠱惑的な世界が、脳髄をズムリズムリと揺らします。

もうお分かりでしょう。
この現実と夢がシームレスになった世界では、あらゆる不可能が可能です。過去への旅、魔人の召喚、あるいは天地創造。DCミニさえあれば、それは可能なのです。
なにしろ、夢の中です。つまり、夢中であれば、なんだって出来るのは当たり前ですからね。金持ちになるとか、金持ちになるとか、あるいは金持ちになることも、お茶の子さいさいってワケです。なので、今日は札束の風呂に入ろうと思います。

―――とはいうものの…
「現実にDCミニあらず。結局ムリであり、妄想。死んで詫びるべし」
と、ご立腹になる方も10人に6人くらい居らっしゃるかも知れません。
確かにそれもそうですが、きっとパプリカはこう言うでしょう。(たぶん)
「少なくとも、想像上―――頭の中―――では可能だし、本当に存在しているでしょう」

あぁ、なんと夢のある話なんでしょうか…。(ドギマギ)。


デービール! ではなく、SF小説です

よく分からないようで、どことなく分かる夢のシーン

理智に富み、美貌。さらに惚れっぽいという嘘みたいなステイタス