孤島に作られた本物そっくりの街でくり広げられる殺人シミュレーション

小説・エッセイ

2012/4/25

七人の証人<新装版>

ハード : PC/iPhone/iPad 発売元 : 実業之日本社
ジャンル: 購入元:電子文庫パブリ
著者名:西村京太郎 価格:540円

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西村京太郎というと、十津川警部の「亀さん、(事件の起きた列車に)乗ってみよう」が奥の手で、なぜか弁当食ってる(それも地元の名物の)シーンが挟まったりして、捜査してるんだかただの鉄っちゃんなのか途中で分からなくなってるありさまだけれど、本書では列車に乗らない。

列車に乗らないかわりに突然後頭部を殴られて昏倒、ふと気がつくとどことも分からぬ無人島に運ばれているという出だしである。どうしても遠くに行かないと気がすまない警部。西村という作家は、読んだことのない人が思っているよりずっと小説がうまく、アイデアも豊富で、なかなか読ませるのである。

目が覚めた十津川の見たものは、ひとつの町角が正確に再現されたセットのようなもので、けれど映画のセットのように中がからっぽの張りぼてでなく、住む人のこまごました持ち物まで用意された巨大なレプリカのような場所だった。

そこには十津川のほかに七人の男女が同じようにして連れてこられており、彼らはレプリカのモデルとなった町の住人であった。と、一人の老人が現れ、一年前に起きた殺人事件のことと、犯人にされた息子の無念を晴らしたいことを語る。その裁判で七人が偽証したため息子は殺人犯にされ獄中で死なねばならなかったのだと。

老人が私財を投じて作った本物そっくりの街で、銃に脅かされながら、はてしないシミュレーションと推理が始まるうち、証人が一人また一人と殺害されてゆく。

趣向としてはこれは「そして誰もいなくなった」と「十二人の怒れる男」を練り合わせた感じであるね。密閉した空間でのサスペンスの盛り上がりと、容疑者の範囲が限定された中での疑心暗鬼の恐怖。

そして明らかになる意外な犯人。

傑作ではないけれど、西村京太郎を読んだことのない方はぜひ。