残酷さと可愛さのハイブリッド吸血鬼ホラー! 杉戸アキラ氏の新境地がここに!!

マンガ

公開日:2019/6/7

『MoMo―the blood taker― 1』(杉戸アキラ/集英社)

 漫画や映画で「ホラーもの」といえば、定番ジャンルとして欠かせない存在。もちろん私も大好きであり、特に「吸血鬼(ヴァンパイア)もの」は過去に名作も多く、要注目のテーマといえる。そして私が現在、とにかく続きが気になっている作品が『MoMo―the blood taker― 1』(杉戸アキラ/集英社)なのである。

 本作は『週刊ヤングジャンプ』に連載されている「吸血鬼もの」で、吸血鬼の美少女・モモと、その眷属(けんぞく)となる御子神京吾の流転する運命を描いている。

 物語は東京某所で発生した猟奇的な「バラバラ殺人事件」から始まる。被害者は身体を切断されていただけでなく、全身の血をすべて抜かれており、普通の人間には不可能と思えるその手口から、犯人は「吸血鬼」のイニシャルで「V」と世間で囁かれていた。警視庁の刑事である御子神は、執拗に「V」の事件を追っていた。かつて彼は恋人を吸血鬼「ふたつ顔の男」に殺されており、その復讐を果たすためである。そしてようやく「ふたつ顔の男」を追い詰めるが、実はその過程すべてが「ふたつ顔の男」の書いたシナリオ通りであった。なす術なく殺されそうになる京吾であったが、その寸前に「ふたつ顔の男」の身体を謎の少女の刃が貫き、その撃退に成功する。そして死の淵にあった京吾に謎の少女は自らの血を与え、京吾は吸血鬼へと変貌する──。

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 とりあえず本作について、最初に言及しておかなければならないのは謎の吸血鬼少女・モモである。このモモ、とにかくやたらと可愛い。しかも本人は200年生きているといっているが、その容姿はまさに少女そのもの。そんな彼女が、ランジェリー姿で京吾に「ちゅー」してくるのである(モモいわく「治療行為」)! そう、吸血鬼となった京吾の「血」の暴走を抑えるために、モモのキッスが必要だったのだ。しかし38歳のオッサンである京吾にキッスする、見た目「少女」の絵面は非常にヤバい。警察官である京吾はそのヤバさを認識し、なんとかモモを引き離すのだった……。全体の展開はシリアスだが、ふたりのやりとりはコミカルで楽しく、それが作品の大きな魅力となっている。

 そして京吾たちと、人を襲う「ふたつ顔の男」のような吸血鬼との戦いが、やはり本作の主軸となる。吸血鬼が残酷に人を殺して血を吸うなど、かなりショッキングなシーンも多く描かれている。作者の杉戸アキラ氏は、前作『ボクガール』ではトランスセクシャルのラブコメを描いており、本作とは随分とテイストが違う。しかし作者の画風と残酷描写は絶妙にマッチングしており、まさしく「新境地」を切り拓いたといえよう。

 吸血鬼との血みどろの戦いを描く一方で、モモと京吾のコミカルな日常を見せる構成は本作に「ギャップ萌え」的な魅力を与えている。とはいえ、個人的にイチオシしておきたいのは、やはりモモの「可愛さ」である。モモに「ちゅー」してもらえるなら、吸血鬼になるのもよいかもしれない。……しかし、血が合わないと「モロイ」とかいう「なり損ない」になってしまうらしいので、要再考というところか。

文=木谷誠