働きやすい職場の秘訣は「上司とのランチ」? 年平均成長率96%の驚異的企業が徹底したこと

ビジネス

公開日:2019/6/10

『最高の働きがいの創り方』(三村真宗/技術評論社)

 2018年2月、日本の「働きがいのある会社」ランキングが発表された。その中規模部門で第1位を獲得したのが、クラウドによる出張・経費管理ソリューションを提供するIT企業「株式会社コンカー」だ。

 昨今はブラック企業やパワハラ問題など、ビジネスマンの働く環境の改善に注目が集まっている。しかし悪い企業文化はなかなか改善せず、いまだに苦しみながら働く人が数多い。

 ところがコンカーは、「人材こそ最大の経営戦略」という方針を徹底することで、年平均96%という驚異的な成長を遂げた。トヨタ自動車や任天堂、花王など、日本を代表する企業たちがコンカーの出張・経費管理ソリューションを使用しており、今後の成長にも期待がかかる。

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 なぜコンカーは「働きがいのある会社」を徹底できたのか。なぜ年平均96%という目を見張る成長率を叩きだせたのか。『最高の働きがいの創り方』(三村真宗/技術評論社)に、そのヒントがあった。著者は同社の代表取締役社長、三村真宗さんだ。

 本書を読めば、経営者でなくても職場の環境を変えるきっかけをつかめるかもしれない。その内容をちょっとだけご紹介したい。

■社員同士を高め合う3つの企業文化が「働きがい」を生む

 働きやすい職場と聞くと、つい私たちは「福利厚生」「給与」「年間休日数」ばかり気にしてしまう。しかしそれらはあくまで「条件」にすぎない。本当に働きやすい職場とは、ストレスなく「いかに働きがいを感じられるか」がカギになるはずだ。

「働きがい」を感じる瞬間は、人それぞれ違う。けれども多くの人に共通しているのは、業務を達成し、社員として成長するときだ。そこで三村社長は、社員同士の相互作用によってお互いが成長する文化「高め合う文化」をイメージした。

 しかし文化をイメージしただけで、社員に作用しなければ意味がない。そこで三村社長は「高め合う文化」をさらに3つの要素に分け、具体的な取り組みに結びつけて、行動として落とし込んだ。

「フィードバックし合う文化」
→社内の問題に気づいたら、口をつぐむのでもなく、陰口を言うのでもなく、お互いにフィードバックし合うことで、社員同士の成長をうながす

「教え合う文化」
→困っている社員がいたら教えたり助けたりすることで、お互いに成長していく

「感謝し合う文化」
→管理職は部下に対して命令口調ではなく、感謝の気持ちをもって依頼する

 こうして作りあげられた企業文化は、やがて社員のパフォーマンスを高め、年平均96%という驚異的な成長を遂げたのだ。

 本書を読むと痛感する。会社の利益を支えているのは、ほかならぬ大勢の社員たちだ。無理なコストカットを進めるほど、パワハラで無理やり働かせるほど、長期的に見れば企業が衰退していく。会社を成長させたければ、まず利益を生み出す社員の「働きがい」に注目するべきだ。

■上司から部下に、上司の改善点を聞き出す

 ここで「フィードバックし合う文化」をもう少し掘り下げてみたい。

 働く人が厳しい環境にさらされるこの時代、誰もが多かれ少なかれ会社に不満を持っている。批判の1つでもはっきりと言えたらいいが、上司に堂々と言えるわけがない。残念ながらこれが普通の職場だ。

 ところが三村社長は、「会社に対する批判は裏を返せば改善点になる」と本書で指摘する。改善点は会社が成長するきっかけになるはずだ。そこで改善点を吸い上げる仕組みを作った。

 ポイントは、単なる不満や思い付きの共有にならないよう、会社全体、他部門、上司に対して「建設的」なアンケートを記入する機会を作ること。「建設的」を強調するために「コンストラクティブフィードバック」と呼んでいる。

 またフィードバックしたままでは意味がないので、「フィードバックで見えた課題をどれだけ実行したのか」という度合いを、半期に一度計測して部門ごとに発表してもらっているという。

 さらに上司は部下からフィードバックを得るべきであることも伝えているという。上司だって完璧じゃない。彼らにも良い点があれば、悪い点もある。それを一番見ているのは部下だ。

 だから「言ってもらえるのを待つのではなく、自分から聞きに行きましょう」という意識のもと、上司から部下に「何か自分にフィードバックはないですか?」と聞く。これなら部下から言いにくいことも「言ってみようかな」と思わせられる。

 社員がより働きがいを感じられるよう、より互いに高め合えるよう、改善点を日常的に吸い上げる「フィードバック」。これは現代のギスギスした職場に最も必要な企業文化なのかもしれない。

■上司と部下のコミュニケーションを深めるのは…ランチ?

 しかしいくらフィードバックを行おうとしても、元々関係が破たんしていたらおしまいだ。だからこそ日常的にコミュニケーションを取れる関係を築いていることが重要になる。

 そこで三村社長が注目したのは、ランチだ。仕事の話も大事だけど、ちょっとした雑談や相談、家族のこと、趣味のこと、とにかく仕事から離れた話題を共有することがお互いの関係を強いものにする。けれども今は「飲みにケーション」の時代じゃない。だからこそ気軽に行けるランチ。「コミュニケーションランチ」だ。

 コンカーでは「3か月に1回、コミュニケーションランチを行う権利」がある。結果はもちろん好評で、多くの社員が利用しているという。

 ランチの絶大な効果に目をつけた三村社長は、他部門の状況が分かり、一味違う学びの機会にできる、他部門の上司と部下が行くランチも始めた。“他”部門の“コ”ミュニケーションなので「タコランチ」と命名したそうだ。

 このほか「マメランチ」「ミムランチ」「タメランチ」など、三村社長はランチに注目して社員同士のコミュニケーションの場を数々設けた。コンカーが驚異的な数字を挙げる理由の1つに、どうやらランチは絶対不可欠のようだ。たかがランチ、されどランチ。決してあなどれない。

 パワハラが横行する日本企業において、上司と部下の関係は目も当てられない。もし上司が部下との関係に悩み、少しでもお互いの関係を良くしたいならば、まずは一緒にランチを食べるところから始めるといいのかもしれない。

 日本の中規模企業の中で最も働きがいがあって、驚異的な成長を遂げるコンカー。その秘密は決してブラックなものではなく、日本のどの職場も憧れるホワイトなものだった。多くの日本企業がブラックでパワハラな文化に染まった今、ぜひコンカーを見習ってほしい。強くそう感じる。

文=いのうえゆきひろ