34歳独身“最底辺グラドル”は枕営業の夢を見るか――彼女が吐露する胸の内がおもしろい!

エンタメ

2019/6/8

『最底辺グラドルの胸の内』(吉沢さりぃ/イースト・プレス)

“スクールカースト”という言葉を耳にするようになって久しいが、スクールを卒業したあとも見えないカーストは存在しつづける。社会に出てからは「才能」「財力」「容姿」「キャリア」など、基準は多様化するものの、殿上人、中流、底辺……という階級の構造は変わらない。

 先日発売された『最底辺グラドルの胸の内』(イースト・プレス)は、自らの階級を“最底辺グラドル(グラビアアイドル)”と位置づけているグラドル兼ライターの吉沢さりぃさんによる、哀愁ただようエッセイだ。

 彼女は、グラビアアイドルとライターという二足のわらじを履いて生計を立てる34歳、独身の女性。本書は、幼い頃から親族に「かわいくないから勉強しなさい」といわれて育ち、かわいい子をひがんでいたという自己紹介からスタートする。さらに、担任の教師に首を絞められた小学生時代にはじまり、武道館でワンマンライブを夢見る30歳オーバーのオッサンとの交際歴や彼女に隠れて出張ホストをしていた最近の彼氏など、パンチの効いた実体験をこともなげに書き連ねている。

 しかし、吉沢さんの軽妙な書きぶりからは、不思議とジメッとした悲壮感は伝わってこない。その特徴は、各コラムのタイトルにも表れている。

・私自身も枕営業できたらよかったのになぁ……とすら、たまに思う。
・本当に女に好かれない。だからといって男に爆発的に好かれるわけでもないところが悲しい。
・彼は本当に悪魔みたいな顔をして“悪魔”という漢字が殴り書きされたトレーナーを着ていた。
・「ブスは素晴らしい!」と唱えたいところだが、残念ながら美人のほうが圧倒的に素晴らしかった。

 ……このように「一体どんなことが書かれてるんだ?」と、ついページをめくりたくなるタイトルが並んでいるのだ。「悪魔」と殴り書きされたトレーナーを着ていた彼の正体は、ぜひ手にとって確認してほしい。楽しかった青春の思い出に全力でぶん殴られる、そんなステキ(?)なエピソードだった。

「泣いたりわめいたりしながらも、意外と当の本人は面白がっている。文章を書く仕事にめぐり合えたからかもしれないが、底辺な出来事ばかりの自分の人生は、なかなか面白い。」

 吉沢さんは自分に起きた出来事、自らやらかした過去を“面白がる余裕”があるからこそ、客観的に振り返ることができるのかもしれない。また“グラドルの胸の内”と銘打たれているが、34歳独身女性のリアルな胸の内も存分に綴られているのも、同書の魅力だ。

 30歳を超えて「可もなく不可もなし、でも、どん詰まり」なんて感じている女性におすすめの一冊。

文=とみたまゆり