超常現象をたしかな論理で背負い投げ
公開日:2012/4/27
テレビ朝日系のバラエティ番組「ビートたけしのTVタックル」の、「炎の大喧嘩 超常スペシャル」において反超常現象派の席に着き、時折鋭い舌鋒を浴びせていた松尾貴史が書いた「超常現象を笑おうBOOK」である。
私もUFOやUMAや心霊現象と称するものは大好きで、ウェブサイト「ガラパイア」を欠かさずチェックする因果な身の上であるが、ほとんどお化けを信じていない。信じていないがそういう話は大好きだ。妖しくインチキくさいところにひかれるのである。だからこの本にも強烈にひかれた。いやいや、インチキくさいからではない。その反対に実に論理的だからである。超常現象なんて理屈に合わない、と切り捨てる、その切り口が爽快なのだ。
ただ、そういうことは科学的にはありえないのだから存在しない。あんた間違ってる、と松尾は決めつけはしない。信じてる人は信じてていいんじゃないのといったスタンスで、いってみれば何かが起こっていることは否定しない、そして不思議なことが起こっているのは楽しい。それがなんなのか疑いながら考えてみようといった立場だ。
取り上げている項目の多さも、超常野次馬の私にはこたえられない。宇宙人、UFO、ミステリーサークル、ナスカの地上絵、スプーン曲げ、ESPカード、気功、ピラミッドパワー、タロット、ダウジング、姓名判断、アガスティアの葉、火の玉、心霊写真、キャトルミューティレイション、これでまだ半分にもとどいていない。もうたんまり山盛りなのである。よだれが出る。
肝心の中身だ。もう引用しちゃおう。「宇宙人 いたとしても地球には来ない」の中で、地球以外に生命体のいる可能性がある星の数を、ある物理学者は「ゼロから8万個」といい、別の科学者は20万個」といっていると述べたあとで、松尾はこう言う。
「光の速さで飛んで何百年も何万年もかかる。滅茶苦茶に進んだ文明を持っている知的生命がいて、光の十分の一までスピードを出せる乗り物を持っていたとしても、誰が好きこのんで、自分達の最高技術を駆使して、何千年も何万年もかけて、彼らにしてみれば「未開の地球人」などに会いにくるものか。ついでに牛の死体を切って血を抜いたり、麦畑を丸く踏み倒したりしながら…。」
つまりユーモアがあるのである。そのユーモアが超常現象を主張する人たちの理屈のナンセンスなところを、ありありと浮き上がらせて、しかもなんだか相手を憎めない感じにしてしまう。いやあ面白かった。つったってコンノケンイチも大好きだけどね。
まえがきをざっと読むと本の姿勢が分かる。オカルト信奉者の方はここでお帰りになるのも自由
真っ向から否定しない「遊び」のある論理も楽しい
事実確認もキッチリと