『怪』が『幽』と合体して新登場!巷説百物語の新シリーズも開始でファン必読の一冊

文芸・カルチャー

2019/6/15

『怪と幽 vol.001 2019年5月』(荒俣宏、京極夏彦、他/KADOKAWA)

 妖怪ものが好きな方であれば読んだことはあるであろう妖怪マガジン『怪』。筆者もときどき購読していたが、いかんせん、月刊誌のようにこまめに発行されているわけではないため、発刊時に見逃してしまうことも多く、気づいたときにバックナンバーを購入するということもあった。このたび発見したのが『怪と幽』(荒俣宏、京極夏彦、他/KADOKAWA)である。同じKADOKAWAから出ている怪談専門誌『幽』という雑誌の存在は知っていたが、その『幽』と合体して新登場というわけだ。なるほど!

 筆者がまず注目したのは、京極夏彦の「巷説百物語」の新シリーズ、『遠(とおくの)巷説百物語』のスタートである。「巷説百物語」は京極の作品の中で特に好きなシリーズだ。映像化されたものも見たが、面白い。妖怪好きにはたまらない内容である。シリーズの再開ということで、今号では「巷説百物語」のおさらいが特集されている。これまでに書籍化されたシリーズの紹介に、裏稼業の人々の相関図と各地ゆかりの人々が図解されており、わかりやすい。「巷説百物語」シリーズをさらに楽しめるガイドブック的な役割も担っているのだ。京極ファンはもちろん、妖怪好きなら楽しめる内容ではないだろうか。

 ちなみに『遠巷説百物語』の舞台・岩手県の遠野は伝承や伝説が多い土地である。特に河童にまつわる話が有名で、筆者は実際に「カッパ淵」に行ったことがあるし、幼少期からいくつか書籍も読んできた。そんななかで、新連載の「それいけ! 妖怪旅おやじ」で大発見があった。

 タイトルの通りおやじ三人衆が妖怪を巡って各地を旅するというもの。このメンバーが固定かどうかは不明だが、文と写真を担当する村上健司と多田克己、そして編集Rとで第一弾は茨城県小美玉市に向かう。一体、茨城の小美玉に何が? と興味が膨らむ筆者だったが、なんと「河童の妙薬」の伝説があるという。確かに河童が妙薬を持っている話は存在する。侍が河童に馬をいたずらされたことで、河童の腕を切り落として持ち帰り、河童の妙薬と引き換えに腕を返す、という内容だが、筆者はずっと遠野の話だと思っていた。

 おや、茨城県にも同じ話があるのだろうか? と読み進めていると、これは遠野ではなく茨城県の伝承であることを初めて知った。うわあ、そうだったのか。 取材では河童を祀っているという「手接神社」を訪れているのだが、石碑や橋の欄干などに配された河童の石像も見応えがある。ちなみに「手接神社」では結んでおくとケガや痛みに効果があるという「きりすね」なる糸の束が賜われるらしい。なるほど、これは今度行ってみよう、と楽しみな情報もゲットできたところで、今後もおやじ三人衆の旅に注目したい。

 妖怪は好きだが心霊系はやや苦手な筆者にとって、怖いけど読んでしまったのが、松原タニシのインタビューである。松原タニシといえば事故物件に住むことで知られているお笑い芸人。その体験を綴った『怖い間取り』はヒット作だ。本書のインタビューでは、事故物件に住むことになったきっかけから、実際に住んでいる当事者としての感覚や事故物件の共通点などに触れている。このインタビューで感心させられたのは松原タニシの死者への真摯な向き合い方だ。筆者の場合、いわくつきの場所は避けているが、松原タニシは事故物件に住むことになったのをきっかけに、あえて訪れるようにしているという。何か突き抜けるものがあるのではないか、という思いがあるそうだ。もはや僧侶の域に近く、松原タニシへの印象も変わるインタビューである。今後も読み応えのある作品やシリーズが楽しみだ。

文=いしい

『怪と幽』似田貝編集長に創刊にあたってコメントを頂きました!

 昨年惜しまれつつも終刊した『怪』『幽』を引き継ぐ形で、新雑誌『怪と幽』が創刊されました。妖怪と怪談というふたつのテーマをひとつの媒体に統合するのは、想像以上に難しい作業です。二誌の名を冠する重みをしかと受けとめ、新媒体では「お化け」や「怖いもの」そして、それらの周辺を楽しみながらさまざまなことに挑戦してゆきます。次号『怪と幽』vol.002(2019年8月末に刊行予定)では、今年創刊40周年を迎える雑誌『ムー』を特集します。『怪と幽』編集長 似田貝大介