集団の中で息苦しさを感じるあなたへ! 「空気」を読んでも“従わない”生き方

暮らし

2019/6/18

『「空気」を読んでも従わない(岩波ジュニア新書)』(鴻上尚史/岩波書店)

 日本は同調文化の国である。「KY(空気が読めない)」という言葉が一般化し、その他大勢と違うことを言えば「空気が読めない人」というレッテルを貼られる。だからわたしたちは、自分の意見を押し殺してでも、集団に従ってしまう。かと言って、集団から爪弾きにされるのはイヤだ。

 そんな人に、『「空気」を読んでも従わない(岩波ジュニア新書)』(鴻上尚史/岩波書店)という本をお薦めしたい。

 キーワードは、「世間」と「社会」。「世間」とは、自分と関係のある人たちのこと。「社会」とは、自分とはなんの関係もない人たちのことだ。「日本人は基本的に、世間に生きている」と著者は指摘する。

 とあるブラジル人が著者にこう言ったという。「ベビーカーを抱えた女性が、駅の階段を上がろうとしていたのに、だれも助けなかった。どうして日本人は彼女を助けないのか?」――。どうして助けないのか?

 答えは、その女性は駅にいた人たちにとって「社会」に生きる人だから。日本人は、自分と関係のある「世間」の人たちとは簡単に交流するけれど、自分と関係のない「社会」の人たちとは、なるべく関わらないようにしている。「より正確に言えば、関わり方がわからない」のだと著者は言う。

■「社会」の人たちには無関心、日本人が好きな「世間」の人たち。5つのルールとは?

 ほとんどの外国には「世間」はなく、「世間」はとても日本的なのだという。欧米をはじめとするほとんどの外国には、「社会」しかない。つまり、自分が知っている人たちと知らない人たちを分けない。エレベーターに乗ると、日本人は全員が沈黙したまま、決して目を合わさず、じっとドアの上に表示された階数の数字を見つめている。お互いが他人で、「社会」に住む人たちだから、会話ができないのだ。欧米では、エレベーターの中で、必ず目礼か会釈か会話が始まるという。知らない者同士が会話することが当たり前の「社会」に生きているからだ。

「世間」には5つのルールがあると著者は言う。「年上がえらい」「同じ時間を生きることが大切」「贈り物が大切」「仲間外れを作る」「ミステリアス」の5つだ。それぞれの詳細はぜひ本書を読んで確認していただきたいのだが、どれも「空気」を読むことを重んじる日本人らしき習慣である。このルールに従わないと、グループでメンバーとケンカしたり、いじわるされてグループにいられなくなったりする。

「世間」とぶつかったり、追い出されたりして、息苦しくなることを避ける方法は2つあるという。ひとつは、同時に他の弱い「世間」に所属すること。もうひとつは、「社会話」をできるようになること。「社会話」とは著者の造語で、「世間話」に対して、知らない人と会話をすることだ。「世間」を抜け出すことは困難だが、ひとつの「世間」だけでなく、複数の「世間」に所属し、「社会」の中で生きることで、生きづらさは緩和される。

 本書には、なぜ日本は「世間」を重んじるようになったのか? 反対に、なぜ外国には「社会」があるのか? 丁寧に解説されている。グローバル社会の中で、日本もこれから「社会」の必要性と直面することになるだろう。生きづらさを解消するためにも、グローバル社会を生き抜くためにも、本書は現代人の必読書となるはずだ。

文=水野シンパシー