ハシゴ外し、公開処刑、悪評流し… あなたと会社を蝕む“ジジイ達”の正体とは?

ビジネス

2019/6/24

『他人の足を引っぱる男たち(日経プレミアシリーズ)』(河合薫/日本経済新聞出版社)

 どうやら私たちを取り巻く人間関係には、いろいろな見えざる“壁”があるようだ。かつて養老孟司氏は、人が「自分には関係ない」と思ったとき、他者との間に無意識のうちに作る壁を「バカの壁」と呼んだ。

 そしていま、かつては気象予報士として「ニュースステーション」などで活躍し、現在は健康社会学者(Ph.D)として、働き方等の研究や著述活動を行う河合薫氏は、組織の成長を停滞させ、腐敗させる要因となる一群のサラリーマンを「ジジイの壁」と呼ぶ。

『他人の足を引っぱる男たち(日経プレミアシリーズ)』(河合薫/日本経済新聞出版社)は、企業や組織に潜む「ジジイ」どもの実像をこれまでの著書よりさらに明確化させ、中でもその得意技であるさまざまな「ハシゴ外し」(他者の足を引っ張る行為)等について言及し、その対処法や、自らがジジイ化しないための処方箋が記された1冊である。

 では、河合氏の定義するジジイとは、どんなサラリーマンなのか。

●人と組織の足を引っ張るのが得意な「ジジイ」とは?

 ジジイとは──決して、高齢者のことでも、男性に限ったことでもないという。年齢や性別ではなく、「あるマインド・意識の状態」を指摘しているのだ。

 著者によれば、ジジイとは「変化を嫌い、自分の保身だけを考え、『会社のため、キミのため』と言いながら、自分のために既得権益にしがみつき、属性で人を判断し、『下』の人には高圧的な態度をとる人々」だ。

 そして、企業や組織の中で、大ジジイを頂点に、中ジジイ・小ジジイという縦社会でつながるジジイ王国を築くという。

 大ジジイはわかりやすい。著者は「2018年は数々の大ジジイの愚行がバレた、当たり年だった」と記し、財務省前事務次官のセクハラ、日大アメフト部前監督、日本ボクシング連盟の前会長、日本レスリング協会の前強化部長、日産自動車前会長らの例をあげている。

 こうした権力トップの大ジジイに対して、ひたすら忖度し、ご機嫌を取り続ける中ジジイ・小ジジイが存在するが、小ジジイともなれば、「20代からそうなる危険性もある」というから注意が必要だ。

●ジジイ化しないために必要な「高いSOC」と「強い自己」

 そんなジジイたちの得意技にして必殺技、それが他者の成功や出世等を蹴落とす「ハシゴ外し」である。他者とはいえ、全員を敵視するのではない。例えば自分に対してこびへつらう部下は大切にする。ただし、自分以上の出世などは、当然させない。

 一方、組織内のジジイ臭を払しょくせんとする、真のイノベーターでも登場しようものなら、大中小ジジイは総動員態勢でジジイの壁というか、もはや要塞を築き、そうした人材の足を引っ張りまくる、というわけだ。

 では、ジジイ化しないためには、どうすればいいのか。

 本書にはさまざまな処方箋が記されているが、その中でも著者が重視するのが「SOC」と呼ばれるものである。

 SOCはSense of Coherenceの略で「首尾一貫感覚」。わかりやすくいえば、自分の人生は筋が通っているなと思える感覚のこと。もう少し詳細にいえば「人生にあまねく存在する困難や危機に対処し、人生を通して元気でいられるように作用する人間のポジティブな心理的な機能」となる。

 要注意なのは、ジジイ的な生き方をしてしまっているのに、「自分の人生は筋が通っている」などと勘違いしないことだ。これを著者は「フェイクのSOC」と呼ぶ。これこそがまさにジジイをジジイたらしめている根源的な要因だ。

●2035年には会社員消滅社会がやって来る

 そこで著者はまず、「強い自己」を育てることを強調している。

 私たちは家庭や学校、会社など、常に外的環境に囲まれながら「自分」を形成していく。「強い自己」とはそうした外的環境と共存しつつも、「環境に依存しないでいられる自分」をつくるということだ。

 つまりジジイ軍団などには付和雷同せずに、自分の信念を保ち、目標に向かえる自分である。

 こうした強い自己を持ちつつ、SOCが高まれば、自分がジジイ化することもなければ、万が一、足を引っ張られたとしても、正当な方法での「倍返し」がしっかりとできるようになるという。

 著者は、「2035年には会社員消滅社会がやって来る可能性がある」と指摘する。つまり、全員がフリーのプロとして、仕事をこなし、組織を渡り歩く時代の到来だ。そうした社会で生き残れるのはジジイではない。強い自己に裏打ちされた、高いSOC感覚の持ち主なのだ。本書で、その処方箋の詳細を読んでみてはいかがだろうか。

文=町田光