『デッドプールで英語が話せる本』から始まったアベンジャーズ初の英語本 制作秘話

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更新日:2019/7/1

『THE AVENGERSで英語が話せる本』(kazuma/KADOKAWA)

「デップーで英語学習の本を作りましょう」

 著者のkazumaさんのそんな一言が始まりだった。
 デップー。デッドプールというアメコミ原作のハリウッド映画のことだ。
 そう、最初のテーマはアベンジャーズではなかった。

 この映画、アメコミヒーローものにはめずらしくR指定がかかっていて、血の描写などが激しかったりするのに加えて、セリフにはいわゆるバッドワード、言ってはいけないとされるような言葉や、思いっきり失礼な表現などが”多々”登場する。それはもちろんあえての台詞回しであって、アクションコメディな世界観とマッチした愉快なスパイスとなっているし、それがウケている要因でもある。

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 kazumaさんはそんな表現を「使ってはいけないものだけど、興味、理解のため」として紹介しつつ、当然作中なされている真っ当な英会話の解説を織り交ぜることで、「好きな作品を楽しむこと」と「英語を楽しみながら吸収すること」をリンクさせようとした。

 したが、それは大人の人たちに怒られNGとなった。「そこ掘り下げちゃダメ」と全力で止められたのだ。kazumaさんに伝え、互いにうなだれる。

これまでにない「映画で英語学習」。それを叶えてくれるヒーロー。

 僕らを救ってくれるヒーローは必ず現れる。危機に陥った登場人物の一市民のように、そんな願望を抱きながら思考を巡らせる、までもなかった。

「我々にはアベンジャーズがいる」

 思わず一人称が変わってしまいそうな閃き。もちろん僕らも大ファンだ。楽しみながらという点では申し分ないどころの話ではない。エンターテイメント性あふれるストーリー、全員が主役で見せ場の宝庫、誰のどのセリフも気になってしまう程の個性。これならいける。確信めいたものを感じた。あとは語学書として成り立つか。kazumaさんに確認をお願いする。

「紹介したいセリフばかりで迷うほどですよ」

 雨降ってうんぬん、怪我のなんとやら。デッドプールは残念だったが、アベンジャーズではなんと100を超える解説をいただけることとなった。

No1映画 The Avengersに相応しいクオリティ

 本書をどこか1ページでも開いていただければ気づくと思うが、その内容は明らかにこれまでのスクリプト本とは一線を画す。大きな、たくさんの映画本編中の写真、細かな場面描写、解説は別冊、登場ワードの簡易的な英和辞典も付いている。

 開かなくても分かるのはその厚みで、今挙げたような大ボリュームが収録されていると外装を見るだけで分かる。Avengersの威光を借りたキャラクター商法ではないのだ。

 当初はセリフと解説のみで、様々な制約により写真の掲載数もずっと少なかったが、最高の映画に相応しい最高の語学書を作るべく、一同最後まで調整や交渉を繰り返し、発売日までに写真大増、場面説明と辞書を追加してお届けできる運びとなった。

 セリフも短い字幕用ではなく極力英語のままの再翻訳だが、セリフの合間に描かれている場面説明も圧巻だ。洋画のスクリプト和訳の書籍にあって、ここまで詳細に場面説明が描かれていることはない。アクションシーンなどもかなり映画に近いところまで追いかけられていて、本書で物語を読み進めるだけでも楽しめる。

 解説もkazumaさんピックアップ。語り口調も分かりやすさもTwitterや書籍「今すぐ使えて、会話がはずむ 今日のタメ口英語」そのまま、Avengersファンなら分かるような、本作ならではの用語も解説してくれている。

The Avengers だから叶ったこと

 全員が主人公、誰のどのセリフも気になる。まさにこれこそが『The Avengers』が英語学習の最強の味方と言える理由だ。個性豊かなヒーローたちの会話を生かした解説はどれも覚えやすく、学ぶ意欲が沸くだろう。

 またデッドプールの内容は、日常控えるべき言葉も参考として比較的たくさん取り扱おうとしていたので、結果としては口に出す機会の多いフレーズが増えて良かったと今になっては話している。大好きなのだが。

 ともあれ、人類の味方は英語学習のときでも心強いことを、ぜひ本書で実感してほしい。

担当T

【著者紹介】
kazuma

10代のときに単身アメリカへ。現地でできた友人と一緒に暮らす中で、「学校で習う英語では自然な会話はできない」と悟る。その後もブルックリンなどへの渡米を繰りかえし、「自然な会話の表現とは何か?」を考えながら現地で交わされる言葉を少しずつ集めていく。自身の経験から得られた英語を紹介するTwitter『今日のタメ口英語』(@e_kazuma)を運営。ふだん使いの自然な英語を紹介するスタイルが注目を集め、フォロワー数は30万を超える。