季節の野菜を簡単料理でたっぷり食べよう! 農家直伝のレシピも詰まった野菜レシピ集

食・料理

公開日:2019/6/23

『エダモンが畑からお届け!農家ごはんと旬野菜レシピ』(枝元なほみ/家の光協会)

 周囲が畑に囲まれた田舎での生活は、産直で毎日採れたての新鮮野菜を買うことができる。近所の農家さんから立ち話のついでに「〇〇(野菜)はこうやって食べるとおいしいよ」という情報をもらえるのも常だ。そんなときに教えてもらうのは、たいていとてもシンプルで簡単なレシピばかり。たくさん採れた野菜をどうにかしておいしく食べたいという思いが素晴らしい知恵を生み出すのだろう。どれもすぐ作れて我が家の定番になるものが多く、レパートリーがぐんと広がったように思う。

 笑顔が印象的な人気料理家の「エダモン」こと枝元なほみさんの著書『エダモンが畑からお届け!農家ごはんと旬野菜レシピ』(枝元なほみ/家の光協会)では、彼女が実際に農家を訪れて収穫を手伝った旬野菜のレシピを紹介している。長年料理の仕事に携わってきた彼女は、「おいしい食材があるからこそ、料理もおいしくなる」ということを実感しているそう。どんな土が作物を育てているのかや、収穫の時期やコツなどを知ることによって、野菜に生産者の思いがどれほど込められているかを感じたという。本書では、農家がどのように野菜を育てているかを紹介しながら、農家の簡単おすすめレシピと、枝元さんが考えた野菜レシピを紹介している。

 長崎県・雲仙岳の麓に広がる島原市は、美しい湧き水と肥沃な土壌が野菜作りに適した土地だ。ここでニンジン栽培を行っているのは農家の酒井さん。甘さが格段に違うという酒井さんのニンジンは、父親や周囲の農家と意見交換を繰り返しながら大切に育てられている。酒井家での定番ニンジンメニューは天ぷらやなますで、なんとおでんにもたっぷり入れるという。枝元さんが紹介するのは「ニンジンと牛肉のピリ辛炒め」だ。縦長の乱切りにしたニンジンと牛こま切れ肉をごま油で炒め、調味料で甘辛味をつけるというもの。4人分でニンジン4本を使うというまさにニンジンが主役の料理だ。炒めることでかさも減り、ぺろっと食べられそうだ。また、形が悪いニンジンや小さすぎるニンジンはすりおろし、炊き込みピラフにするというアイディアには感心した。炊き上がったご飯はきれいな黄色をしていて見た目にもごちそう感があるので、おもてなしの際などに作ってみようと思う。

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 高知県に位置する安芸市は、ナスの生産地として有名だ。ナス農家の尾木さんは、ナスに付く害虫を食べてくれる天敵昆虫をハウスに入れることで、農薬を使わず害虫を防除する「天敵農法」を採用している。環境にも優しく、安心安全な野菜が収穫できるとあって消費者から高い評価を得ているそうだ。尾木さんが教えてくれる料理はなんと「ナスのたたき」。薄くスライスしたナスを素揚げして皿に並べ、その上にこんがりと焼いたアジの身をほぐしたものをのせ、薬味とゆずポン酢をかけるというもの。ナス好きの私には間違いなくおいしい料理だとわかる。このような食べ方は思いついたことがないので、まさに農家ならではのアイディアだろう。一方の枝元さんは、塩水に浸けてしんなりさせた丸ごとのナスに肉だねを詰めて油で揚げる「ナスの肉詰め太っちょフライ」を紹介。見た目のインパクトもさることながら、油と相性の良いナスの旨みが想像できて思わずお腹が鳴る。

 他にも、栃木のニラや宮崎のズッキーニ、長野の白菜、徳島のカリフラワーなど、全22種類の野菜が登場する。どれもスーパーなどで購入できる身近な野菜ばかりだが、レシピは目からウロコのものが多いので料理の幅が広がることは間違いないだろう。季節ごとに出回る旬野菜には栄養もたっぷりと詰まっている。本書を読んだ後には、普段何気なく料理している野菜に感謝の思いも湧き上がってくるはずだ。

文=トキタリコ